<事例/質問>
契約書さえ作っておけば、後は安心できますでしょうか
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
契約書は約束の記録や証拠に過ぎません。
契約書がしっかりしていても、約束を果たせるかどうかは他の要因にも大きく依存します。
まず重要なのは、契約相手が信用できるかどうかです。
例えば、契約書は完璧でも、相手が前科のある詐欺師なら事件になる可能性があります。
また、事業が危機的状況にある相手にお金を貸す場合も、契約書がどれほどしっかりしていても返済は期待できません。
契約相手が約束を果たせる状況にないからです。
さらに、契約相手が誠実であっても、能力不足の場合も問題です。
例えば、経験や知識のない人に大きな投資や専門的な業務を任せるのは、契約書が完璧でも実現不可能です。
実現可能性や前提条件に誤りがある契約も問題です。
経験や知識がないまま大規模なプロジェクトを引き受け、結果的に納期遅れや予算オーバーとなることがあります。
システム開発やAI、省力化プロジェクトなどでは、追加開発費用が膨らみ、最終的に契約破棄に至ることもあります。
東京地裁にある建築紛争やIT紛争専門部のように、契約書がしっかりしていても相手のスキルや能力を誤解したために起こる紛争が多いです。
取引条件が不明確であったり、表現が曖昧であったりするとトラブルの原因となります。
例えば、期限やスペック、ペナルティが明確でない契約は、実行が遅れたり、言い訳がましくなったりします。
要するに、契約書があるだけでは不十分であり、取引相手の信頼性や履行能力、取引内容の合理性や実現可能性、そして契約内容の明確さがすべて揃って初めて、安心できる取引となります。
契約書がいくらしっかりしていても、それを実行できる相手でなければ意味がありません。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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