1 「ビジネス」という非常識な世界、さらに非常識で良識が通用しない「企業法務」「ビジネス法務」の世界
「企業法務弁護士やビジネス弁護士としてのキャリアを歩む」ということは、
・「ビジネス」や「(ビジネスを組織ぐるみで展開する)企業」という非常識な世界を理解し、
・さらに、これを上回る、非常識で良識が通用しない「企業法務」「ビジネス法務」という特な空間で、熾烈な知的ゲームをする、
ということを意味します。
そして、これらの世界は、あなたが小学校で学んだ道徳や常識とはまったく異なる場所です。
というか、小学校の教育には、想像すら困難な世界です。
ここで求められるのは、既存のルールを超えた非常識な思考と感受性と行動です。
企業法務やビジネスの現場では、
「この世にはお金より大事なものがある」
とか
「真面目にやっていればお金は後からついてくる」
といった、
「陳腐な戯言や、(金儲けや喧嘩には)有害な寝言」
を捨て去り、全く別の常識や情緒や行動が求められます。
企業法務弁護士やビジネス弁護士が扱うことになるのは、
「(カネや財産や権利に狂ったように執着する)経済社会における、さらに、『(図体の大きいプレーヤーほど)やったもの勝ち』がまかり通り、『勝つためにはどのような手段でも取ることが当たり前』という、病理的な空間における、特異な現象」
です。
これらの案件遂行には、常識的な解決策では太刀打ちできない、異常な状況が日常的に発生するのです。
2 非常識な金額と規模
企業法務弁護士やビジネス弁護士が扱う訴額やディールサイズは、常識を超えた規模になります。
数億円、数十億円、場合によっては数百億円規模の案件が飛び交う世界です。
これほどの金額が動く場面では、常識的な思考では到底理解できない戦略や駆け引きが繰り広げられます。
というか、
「面の皮が厚くないと、大企業の経営や、大きな事業や国際事業などやっていけない」
というのが現実です。
企業社会においては、各プレイヤーが自社の利益を最大化するために、あらゆる手段を駆使します。
交渉の裏で行われる策略や情報戦は、まさに
「何でもあり」
「やったもん勝ち」
のグロテスクな世界です。
このような状況では、小学校で学んだ
「損得を考えず、正しいことをする」
という道徳的な観念は、まったく通用しません。
「生き馬の目を抜く」
ことが普通に求められ、ボーっとしていると全てを取り上げられる、殺伐とした社会です。
3 ルール軽視、結果が全て、何でもありの総力戦
非常識なカネや権利や財産の奪い合いの状況では、
「ルール軽視、結果が全て、何でもあり」
の総力戦が展開されます。
ここでは、あの手、この手を駆使して、相手を出し抜くことが普通に行われます。
自分がやるやらないは別として、相手は、平然と、あの手、この手のみならず、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技・・・これらすべてを駆使してきますし、そういうことを想定し、対処構築しておくことが求められるのです。
このような環境で成功するためには、柔軟な思考と合目的的行動が必要です。
例えば、契約書の一文をどう解釈するかによって、数億円、数十億円、さらには数百億円の利害得失が変わることもあります。
そのため、常に先を見据え、相手の一手先を読む力が求められるのです。
4 トラブルと想定外の連続
ビジネス活動や企業活動においては、トラブルや想定外の事態が日常的に発生します。
これらの問題に対処するためには、迅速かつ的確な対応が求められます。
また、予測不可能な事態に備えて、常に複数のシナリオを用意しておくことも重要です。
取引や、契約交渉より、さらにシビアなやりとりになる裁判外交渉や、訴訟といった、ビジネス法務や企業法務に関する事柄においては、さらに高い頻度で重篤な想定外が発生します。
問題が起きることを予想し、問題に対処するためのリソース(時間やお金のほか、認識の冗長性や、精神的な余裕を含む)を確保し、冷静かつ的確に対処し、大事を小事に、小事を無事に近づけるような行動が求められるのです。
5 非常識なプレイヤーとの戦い
企業法務弁護士やビジネス弁護士としての仕事は、非常識なロジックとルールで戦うプレイヤー相手に行われます。
これらのプレイヤーは、平然と非常識な打ち手を使い、相手を圧倒しようとします。
このような環境で成功するためには、相手の思考や行動を先読みし、それに対抗するための戦略を練ることが重要です。
常に相手の一手先を読み、それに対抗するための準備を怠らないことが重要です。
6 新たな「常識」のインストール
企業法務弁護士やビジネス弁護士として活動するためには、小学校で学んだ常識を捨て去り、新たな常識を確立することが必要です。
この新たな常識とは、非常識な状況に対応するための柔軟な思考と常識に囚われない果断な決断と行動力です。
そして、これをモノにするためには、マキャベリの頭脳とゴリアテの巨体を持つ圧倒的な強さを誇る相手と、シビれるような勝負の舞台に立ち、修羅場を何度もくぐり、クライアントに罵倒されることを含めた屈辱を噛み締めつつ、死なない程度のかすり傷をいくつも負いながら、体で覚えておくほかありません。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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