<事例/質問>
取引先とモメています。
相手は弁護士をつけたようで、内容証明郵便の通知が来ました。
いろいろ質問事項が書いてありますが、こちらとして認めると後々不利になるようなこともあります。
他方で、通知文書には文書が届いてから10日以内にて返答せよ、と書いてありました。
どうも受け取った総務部長が慌ててしまってあれこれ悩んだ挙げ句、届いたこと自体を社長の私に隠していて、何と、今日が回答期限です。
いい加減な回答をして、あとで裁判になって揚げ足取られてもこまります。どうしたらいいですか?
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
まず、内容証明郵便が届いたからといって慌てる必要はありません。
内容証明郵便は、法的な効力を持つものではなく、ただの
「お手紙」
です。
DMやラブレター、怪文書と同じで、受け取ったからといってすぐに行動する必要はありません。
相手が設定した10日以内という回答期限も、一方的なものです。
そのような短期間での返答を求められても、こちらがそれに応じる義務はありません。
実際、こういった通知に対して急いで対応すると、後々不利になる可能性があります。
相手の要求に対しては、
「希望を与えず、絶望もさせず」
というように、冷静かつ慎重な対応を心がけるべきです。
たとえば、官僚の答弁や総理大臣の記者会見のように、巧みに対応することが求められます。
内容証明郵便には何の法的効力もないため、まずは慎重に状況を確認し、必要であれば専門家に相談しましょう。
慌てて返答することは避け、じっくりと調査を進める姿勢を示すことが重要です。
こちらが慌てる必要は全くありませんし、遅れても申し訳ないと思う必要もありません。
むしろ、相手が急ぐのであれば、訴訟を起こすなり明確な法的手段を取ってくるべきです。
訴訟を起こせないからこそ、内容証明郵便という中途半端な手段を使ってきているに過ぎないのです。
今回の返答としては、以下のように対応することが考えられます:
「~~~~~~」旨の常識では想定しがたい内容の内容証明郵便を受け取り、当方としても非常に困惑しております。
~~~~~との件について、突如、特段の法的根拠を示すこともなく、10日以内という短期の期間を区切った上で、「連絡せよ」などと要求されても、一般に期限内に対応することは困難を極めます。
まず、10日間という期限自体、貴方が一方的に設定したものであり、当方としては特段法的に拘束されるものではありませんので、したがって、貴ご主張の10日間との異常までに短期の対応期限については、こちらとしてはこれに応じる立場にはないということを先ずはご確認下さい。
当社としては、貴通知を受けましたものの、彼我の事実認識や法令解釈に大きな隔たりがあるため、今後の貴方との交渉については、慎重な対応をせざるを得ないところです。
本件書簡記載のご主張については、一応の調査を開始いたしますが、貴職らが一方的に定められた期間内に回答すべき具体的な法的根拠が明示されていないうえ、その内容が調査に時間を要するものであるため、当該期限に従うべき理由はないと、判断します。
通知人らといたしましては、一定の法令や義務に基づくものという趣旨ではございませんが、一定のお時間を頂いたうえで、本件書簡にかかる事項につき、検討させていただき、しかるべき対応をおってさせていただきます。
なお、お約束するのは、何らかの対応であって、貴ご要望の全部または一部に従うことを当然に意味するものではありません。
当然、貴ご要望に添いかねるとの対応の可能性もありますが、この点、予め、あしからずご了承ください。
このような返答をすることで、相手に対して冷静で慎重な対応を示しつつ、こちらの立場を守ることができます。
無理に期限内に返答する必要はありませんし、返答内容も慎重に選ぶべきです。
弁護士に相談しながら、次の一手を考えましょう。
詳細は、以下をお聴きください。
https://audee.jp/voice/show/58335
※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、35分12秒以降から開始されます
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
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