02051_法的対処プロジェクトに対する姿勢

当事務所が弁護費用を提示する際、その金額がクライアントの予算を超えている場合には、以下のように説明いたします。

1 法的紛争の本質

ほとんどの法的紛争には
「正解も定石もない」
という点が特徴です。

特定のルーティンケース(明確な借用書を前提とした債権回収や、手続きが確立された倒産処理)を除き、各ケースは独自の展開を持ち、それに対応する唯一無二の解決策は存在しません。

状況認識、状況判断、相手の出方、裁判所の反応、そして最終的な展開予測まで、全てが予測と選択の連続です。

2 状況認知と判断

我々弁護士は、以下の要素を認識し、解釈し、展開推移を予測します。

(1)状況の認識と危険の認知
(2)ケアすべき課題
(3)相手方や裁判所の感受性とリアクションの予測

この
「正解も定石もない」
ゲームにおいて、可能な限り広範囲の選択肢を提供し、その選択に基づいて最善の方針を追求します。

ただし、我々が正解を知っているわけでもなく、定石を把握しているわけでもありません。

むしろ、クライアントには、我々の慎重で保守的な判断が
「度を越すくらい慎重」
と映ることが多いですが、これがしばしば正確であると感じています。

3 高い見積もりの理由

慎重で深刻な状況認識と判断は、より多くの資源を必要とし、それが費用に反映されます。

これは、クライアントの安全を最大限に守るための措置です。

しかし、クライアントがもっと簡単で低予算な解決策を選びたい場合、その意向も尊重します。

我々は、クライアントに選択肢を提供し、予算内で最善を尽くすことを誇りとしています。

4 選択の自由と責任

弁護費用の見積もりは、当事務所の状況認識に基づく1つの提案に過ぎません。

最終的な判断はクライアントが行うものであり、その選択に対して我々は全力で対応します。

たとえば、”Bー29”を撃墜するための”対空ミサイル”を提供いただければ、それを運用して最大限の効果を追求します。

しかし、”竹槍”しか用意できないのであれば、それを使って最善を尽くします。

ただし、論理的・構造的に不可能な命題を提示される場合、その結果責任もクライアントに帰属します。

5 予算策定プロセス

予算策定は、クライアントの判断材料を提供し、協議を重ねながら進めます。

初期段階では、保守的な見積もりを提示し、そこから予算を削る形で進める方が、効率的で現実的です。

このプロセスを通じて、クライアントに多くの選択肢を提供し、その中から最適な解決策を見つけ出すことに重きをおいています。

5 結論

提案した弁護費用は、当事務所の経験と論理的な予測に基づくものです。

最も保守的で重篤な状況認識を前提としたプランから、クライアントの選択に応じた柔軟な対応を行います。

法的対処プロジェクトには正解も定石もなく、すべては選択課題です。

我々はクライアントの選択を尊重し、その選択に基づいて最善を尽くしますが、結果の責任はクライアントに帰属します。

この点を理解いただき、共に最善の解決策を追求していくことを望みます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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