02055_企業法務ケーススタディ:利益相反に直面した弁護士の選択

<事例/質問>

大手食品グループの○○社の中で、とても大切な役割を担っていた●●社が、
「自分たちでやっていく」
と言って、○○社から離れることを決めました。

○○社は
「●●社がいなくなると、グループ全体の結束が乱れてしまう」
と心配しています。

そのため、何とかして●●社が離れないようにしたいと考えています。

さて、これまで○○社からの依頼で●●社が困ったときに手助けをしてきた弁護士は、今では●●社とも契約を結んでおり、両方の会社をサポートしています。

このような状況で、弁護士が○○社を助けて●●社の離脱を止めることはできるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

弁護士は、これまで○○社の要請に応じて●●社が抱える法的問題の解決を支援してきましたが、現在は●●社とも顧問契約を結んでいます。

このような状況では、弁護士職務基本規程に基づく
「利益相反禁止」(弁護士職務基本規程 第25条)
が適用されます。

依頼者間に利益相反が生じる場合、弁護士は一方の依頼者の利益を損なう可能性があるため、双方の関与が禁止されています。

また、仮に●●社との顧問契約を解除したとしても、過去に●●社に対して行った業務が影響するため、
「継続的利益相反」(弁護士職務基本規程 第27条)
が問題となります。

過去の依頼者との関係でも利益相反が生じる可能性があるため、完全な中立を保つことが難しいのです。

この
「継続的利益相反」
の規定により、弁護士は過去の関与があった依頼者との関係でも、新たな依頼を受ける際に慎重な対応が求められます。

結果として、法と倫理を重んじ責務を全うする弁護士としては、○○社と●●社のどちらにも助言を行わず、
「好意的中立」
という立場を取ることが唯一の選択肢となります。

この
「好意的中立」
とは、依頼者のいずれか一方に肩入れせず、公正かつ公平な対応を維持する姿勢を意味します。

具体的には、要請があれば、弁護士は必要に応じて、利害が独立した他の弁護士を紹介することになります。

以上は、あくまで、○○社が●●社に対して喧嘩をする、という前提においてです。

もし、両者が、和解交渉をしたい、という要望があり、そのコミュニケーションサポートをする、ということであれば、弁護士が
「どちらにも加担せず、どちらにもメリットのある和解交渉の行司役・調停者」
として行動することは、●●社の了解を得る前提で、可能です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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