02063_有事におけるコミュニケーションの文書化とその例外

有事においては、コミュニケーションを文書化することが鉄則です。

つまり、筆談で行うべきだということです。

しかし、例外もあります。

それは、証拠に残したくなくて、下劣でエレガンスに欠ける高潔な人格者にふさわしくないような暴力的なメッセージを発する場合です。

そのようなメッセージを外交のカウンターパートに送ることは、交渉プロセスの終結リスクや相手に被害者意識を与え、我々への報復を正当化させるきっかけとなるため、実際にはほとんど行われません。

例外があるとすれば、チームメンバー内において、次のような状況です。

・メンバーの認識や認知機能に問題があり、偏った認識により適切な判断ができない場合
・しかも、時間がなく、あるいは、機能改善のために十分な時間を費やすような時間的・経済的応報性が維持できない関係(つまり、切迫した状況で、時間的にも経済的にも余裕がない)
・メンバーの認知機能やバイアス、主観を改善するために、3年ほどの時間をかけてエレガントに対応する余裕がない場合
・メンバー本人も、早急に、根源的な問題点に到達したいと強く願い、厳しい現実に向き合う覚悟があると表明している場合(本心かは別として)。

このような場合には、時間と労力を節約し、コミュニケーションのチャンネルを迅速に切り替えるために、一時的に、あえて、
「証拠に残したくなくて、下劣でエレガンスに欠ける高潔な人格者にふさわしくないような暴力的なメッセージ」
を発することがあります。

これまでの経験では、クライアントから
「とにかく、根源的な原因を探り、ありとあらゆる打開策を検討したいので、タブーなき議論をしたいので、何でも話してくれ」
と言われ、その言葉を真に受けてしばらく話をすると、多くの場合、クライアントは次のように言います。

「何をいっても構わないが、本当のことだけは言わないでくれ。たいていのことは耐えられるが、真実に直面することだけは耐えられない」

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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