リスクとは何かを正確に把握し、その性質や大きさを特定・提案することが重要です。
その上で、そのリスクが顕現しないようにするための予防ないし改善する合理的方策を、クライアントに提示して、実施することになります。
リスクや目的をどう捉えるかによって、選択肢は変わってきます。
たとえば、
「道義的なリスク」
と
「法的なリスク」
とでは、選択肢は異なります。
それだけではなく、提示されたクライアントの反応も全く違ったものになります。
「道義的に、マナーやエチケットの面で後ろ指を刺されるリスクがありますよ」
と説明されたクライアントは、そのアドバイスを無視するか、軽視する傾向にあります。
他方で、
「これを行うと、刑務所に行くことになります」
と言われると、クライアントは、助言どころか弁護士に判断に仰ぎます。
ここで重要なのは、
「何を目的として」
という前提を、まずは、きちんと確定・確認することです。
そのうえで、
「大事を小事に、小事は無事に」
という考え方で、予防策や改善策を適切かつ具体的に提示することです。
既に発生したリスクについては、根本的な改善策を含みます。
何を最優先するかによって選択する対策が異なることは、理解できないクライアントも少なからずいます。
事件の性質によっては、即座の応対を求められることもありますが、その場合でも、弁護士として、クライアントにしっかり確認をとる姿勢が求められます。
まずは、
「所内で協議確認しますが、さしあたって、お急ぎということであり、担当の一次判断ということでご承知おきいただく前提で、コメントないしご助言申し上げます」
という留保がありうべきでしょう。
逆に、
「何とかします」
「何とかしなければ」
というような脳内環境を無自覚にもつ弁護士には、クライアントは不安を感じ、
「こんな弁護士には絶対に頼らない」
と、思いかねません。
このように、リスクの特定、予防策の提案、そしてその実行には、冷静で論理的なプロセスが必要です。
クライアントの立場を重視し、信頼を得るための対応ができる弁護士こそ、結果的にクライアントから認知性を高めることができるのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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