「請求放棄」
という訴訟手続きの終わり方は、表面上は自ら裁判を取り下げる形を取っていますが、実質的には
「敗訴」
に等しいといえます。
これは、裁判に負けたという事実を暗に認める行為であり、
「勝ち目がない」
「もう戦い続ける意味がない」
との判断から行われる場合がほとんどです。
ですから、請求放棄は単なる裁判からの
「手引き」
ではなく、
「私たちは間違っていました」
との意を含んだ行動と言えるでしょう。
このような形で訴訟が終わる背景には、裁判所からの
「強い勧告」
があった可能性が高いでしょう。
裁判所が
「このままでは敗訴判決が出る」
と告げ、続けることで
「無様な姿を晒すことになる」
と諭すように進言することがあります。
つまり、事実上の
「敗訴」
を予告されたといっても過言ではありません。
特に、もともと訴えを起こした側が
「詐欺だ」
「横領だ」
と騒ぎ立て、激しい主張を繰り返していたにもかかわらず、最終的には自ら請求を放棄する形で訴訟を終えたような場合、弁護士が相手方の弁護士から何らかの圧力を受けて
「そろそろ依頼者と縁を切れ」
と説得に回り、請求放棄に至った可能性も考えられます。
いわゆる
「無能な味方は敵よりも怖い」
とも言える状況で、依頼人(訴えを起こした側)の立場はどんどん悪化していったのかもしれません。
さらに、請求放棄には深刻な波及効果も生じます。
つまり、
「訴えを起こした側の主張は虚偽だった」
「相手方の主張が事実だった」
と周囲からも見なされるようになります。
訴訟の争点自体が
「訴えを起こした側の虚偽」
であり、相手方の主張が正しかったことを、最終的に証明する形となってしまうのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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