02083_弁護士の役割と責任範囲を再確認する

プロジェクトにおける弁護士のスタンスについて、明確にしておくべき重要なポイントがいくつかあります。

本来、弁護士の役割は、依頼者がデザインしたゴール(時間、完成、予算の各軸)を達成するための具体化と実施を支援するものであり、そのゴールデザインを依頼者側が社内で調整・合意することが前提です。

しかし、依頼者側からゴールデザインや社内調整のすべてを弁護士に丸投げするようなスタンスは、現実的には珍しいものの、実際に少なからず存在する事例でもあります。

特に、社内調整が未了である状況で、別の関係者からの情緒的な反発や理解不足に起因する問題が顕在化した場合、それらをプロジェクト担当者が弁護士に押し付けるような事例も見受けられます。

弁護士として対応可能な範囲

弁護士としての基本的なスタンスは以下の通りです。

・依頼者の要望が法的・経済合理的に可能であれば、できる限り対応する。

・依頼時点で、責任の範囲やプロジェクトの前提条件について具体的な合意が必要。

例えば、プロジェクト発足当初から
「プロジェクト責任者」
「プロジェクトオーナーとの対応窓口」
「社内調整責任者」
「代理人弁護士」
という複合的な役割を明確に依頼され、そのためのコストが承認されている場合には、異存はありません。

しかし、コスト面での抑制を求められる一方で、
「プロジェクト責任者」
兼「プロジェクトオーナーとの対応窓口」
兼「社内調整責任者」
兼「代理人弁護士」
というように、責任や役割範囲を大幅に拡大しようとする姿勢が見受けられた場合、弁護士としてのスタンスを見直す必要があります。

責任範囲の見直し提案

担当者からの発言内容に基づき、以下のような役割と責任範囲が弁護士に求められる場合、費用の再設計が不可避となります。

・要件定義やゴールデザイン、マイルストンの抽出
・プロジェクトオーナーとの調整
・社内反対勢力の情緒と無理解へのフォロー
・全体的なコミュニケーションフローの調整

これらを弁護士に任せる場合、依頼者側の負担は軽減されるかもしれませんが、弁護士としての負担と責任が大幅に増加するため、相応のコスト負担を依頼者には理解していただく必要があります。

経済合理性を考慮した提案

弁護士としてのスタンスは一貫しており、
「クライアント様からのご要望については、どのようなものであれ、法的・経済合理的に無理難題でなければ、あらゆる要望に対応する」
というものです。

ただし、以下のような条件は経済合理的に
「無理難題」
に該当します。

1.十分なコストを払わない
2.権限が曖昧で責任の所在が不明確
3.関係者が自由気ままに発言し、情緒が不安定
4.失敗時にはすべて弁護士に責任を押し付ける

これらの要素が揃っている場合、弁護士としての対応が困難となります。

そのため、依頼者と弁護士の間で責任範囲とコスト負担について再度の合意形成が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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