<事例/質問>
あるプロジェクトをすすめていました。
私は経営者ですが、別途プロジェクトオーナーがいます。
さて、税務署から
「お尋ね」
や
「確認のための通知」
が届きました。
このことを、プロジェクトオーナーに相談すべきか、あるいは、顧問弁護士に相談すべきか、悩んでいるうちに時間が経ち、結果的に、税務署からの通知を無視し続けることになりました。
すると、ある日突然、税務署の査察調査を受けることになりました。
その後、調査結果通知書が届きましたが、今度は、資金繰りで悩み、修正申告を先延ばしにしているうちに、税務署から告発通知書が届きました。
どうやら、私は脱税したとして国税局に告発され、事件が刑事事件として捜査機関に引き継がれたようです。
これにより、捜査機関から取り調べを受けることになりそうです。
私は、顧問弁護士にもこのことを言わずに、知り合いから紹介された別の弁護士に助けを求めました。
でも、やはり、どうにもならなくて、元の顧問弁護士に、依頼しなおそうかと思います。
<鐵丸先生の回答/コメント/アドバイス/指南>
脱税したとして、当局からの査察が入ったという
「事件」
そのものは、ひとつの大きなリスクです。
さらに重要なのは、
「事件後の対応」
で判断を誤ることがリスクです。
この2つのリスクを理解した上で、どのように対処するか、よく考える必要があります。
たとえば、リスクの1つとして、次のような分岐例があります。
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どのような態度で査察対応し、どのような調書に署名をするか?
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(1)従順対応説
なんでも言うことを聞いて、やってもいないことを
「やった」
と認めたり、あるいは指南役に唆されたにもかかわらず、すべて自分の意思で行ったことにして、調書に署名する方法。
この方法では、一時的に波風を立てずに済む可能性がありますが、不利な調書が後々利用され、結果的に現状を悪化させるリスクがあります。
(2)正直対応説
やったことは認めるが、やっていないことについては毅然と否定する方法。
不当な虚偽事実の署名を強制されたら、抵抗することによって、告発を見送り、あるいは告発されても、起訴・不起訴で戦える環境を作った方がいい、という方法。
短期的には困難を伴うかもしれませんが、長期的には争える環境を整えることができます。
弁護士としては、
「(2)正直対応説」
を推奨します。
この分岐点で、
「(2)正直対応説」
をプロジェクトオーナーに示唆し、プロジェクトオーナーに判断の前提を整え、プロコン分析を提供し、しっかりとしたジャッジをしてもらうことが、経営者のプロとして正しい姿かと思います。
そして、この分析を支援し、判断の前提を整えるのが弁護士の役割でもあります。
仮に、
「(1)従順対応説」
のみしか提供せずに、あたかも、それが唯一かつ最善の方法であるかのように評価する弁護士がいるとしたら、それは
「ろくでもない弁護士」
と言わざるを得ません。
最後に、このような出来事に対処する上で、重要なポイントを挙げておきます。
(A) 状況に変化があれば、「必ず相談する」という約束を守ること
状況は刻一刻と変わります。
そのたびに信頼できる弁護士に相談することが大切です。
自分だけで判断し行動するのは、リスクを高める原因となります。
信頼できる弁護士とのコミュニケーションが鍵となります。
(B) 顧問弁護士との長期多岐な信頼関係を維持すること
本来信頼すべき弁護士に事実を隠し、別の弁護士に相談する行動は、事態を複雑化させ、最適な判断を妨げる原因になります。
依頼し直すことを検討しているのであれば、最初から率直に相談しておくほうが、スムーズかつ適切な対応が可能だったはずです。
専門家との連携を密にしながら、ご自身のすすむべき道を考え、選択してください。
それが、経営者のプロとしての姿勢です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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