当局対応において、物証がない限り、自白はしないことが基本中の基本です。
焦って自白してしまうと、相手の思うツボにハマり、逆に不利な状況を招くことになります。
ここでは、
「当局対応」
の基本的な心構えや戦略について具体的に説明します。
これは、あの手、この手、奥の手を駆使し、時には禁じ手や小技、さらには寝技や反則技まで視野に入れる必要がある、いわば知恵比べの場での鉄則ともいえます。
1 相手のギブアップを見逃さない
「説明しろ」
「報告しろ」
「自白しろ」
と当局が求めてくる場合、それは一種のギブアップのサインです。
「調べきれなかった」
「証拠を見つけられなかった」
という無力感が透けて見えます。
このような場面で、自ら不戦敗を宣言してしまうのは、人としては誠実ですが、戦略的には大きな誤りです。
相手が明らかに追い詰められているのに、自分から手を引く必要はありません。むしろ、ここで突っ張ることこそが戦いの基本です。
2 辻褄合わせよりも、あくまで突っ張る
「論理的に説明しないと納得してもらえない」
と考えるのは子供の世界です。
大人の世界では、辻褄が合わなくても、ひたすら突っ張ることが重要です。
たとえ相手が
「おかしい」
と指摘してきても、堂々と
「弁解しっぱなし」
の姿勢を貫くことが必要です。
例えば、
「確かに今見ると間違っています。でも、ありうるミスですよね。これは事件としての過失ではなく、人として生きていれば当然起こりうる、誰にも責任を帰することができない事故です」
こうした言い方で、あくまで
「事故」
であることを強調することがポイントです。
3 嘘は禁物。ただし、方便としてのストーリー作りは必須
嘘をつくことは避けるべきですが、それと同時に、当局や裁判所が納得できる
「ストーリー」
を構築することは重要です。
ここでいう
「ストーリー」
とは、客観証拠に基づき、起承転結の流れがあり、わかりやすく説得力のある話を作ることです。
たとえそれが厳密に真実そのものではなくても、裁判所や相手方に
「納得」
してもらえることが優先されます。
実際、政府や裁判所ですら、こうした方便のストーリーを日常的に用いています。
つまり、自分が同じことをするのは決して特別なことではありません。
4 裁判は真実を追求する場ではない
裁判という場は、真実を発見するための手続きではありません。
裁判所にとって
「心地よいストーリー」
を選ぶためのプロセスです。
原告も被告も、それぞれが自分に都合の良いストーリーを作り、それをプレゼンし、裁判官に気に入られることを目指します。
このため、どちらのストーリーも必ずしも真実そのものではありませんが、誰もその点を問題視しません。
重要なのは、いかに相手よりも魅力的なストーリーを提示できるかです。
5 戦略的な姿勢を忘れない
当局対応においては、相手がどのような意図で動いているのかを的確に見極め、自分の立場を強化するための行動を取ることが肝要です。
嘘はつかないが、時には方便のストーリーを作り、あの手、この手を駆使する。そして、相手がギブアップしていると判断したときには、断固として突っ張る。
このように、戦略的な視点を持つことで、不戦敗を避け、自分の権利を守ることが可能になります。
まとめ
当局対応は、
「相手の動きに翻弄されない」
「自ら不利な情報を渡さない」
という基本的な心構えがすべてです。
真実や正直さだけではなく、
「ミエル化」
「カタチ化」
「言語化」
「文書化」
「フォーマル化」
といった形で、自分の主張を効果的に伝えるスキルが必要です。
そして、最終的には、あの手、この手、奥の手、禁じ手、小技、寝技、反則技を駆使して、勝利を目指すのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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