契約書について弁護士に相談する際、事前に以下の点を整理することでスムーズなコミュニケーションが可能となります。
契約法務に慣れていない場合は特に重要です。
次に述べるポイントを確認しながら、相談の準備を進めてみてください。
1 契約書を「読んだ」のか「読んでいない」のか
最初に、自身が契約書をどの程度把握しているかを明確にします。大きく以下の2つに分けられます。
(1)「読んだ」と言える状態
契約書にひととおり目を通し、その内容や条項が何を意味しているのか大まかに理解していることをいいます。
仮に、専門的な表現が多く完全には理解できなくても、条項の重要箇所や気になる部分を具体的に挙げられる状態を指します。
(2)「読んでいない」状態
契約書を開いて眺めたものの、内容や条項が何を意味しているか全く理解できていない場合を指します。
この状態は、
「ただ契約書を見ただけ」
に過ぎず、
「読んだ」
とは言えません。
特に契約書が英語の場合、専門用語や法律独特の言い回しにより、契約書の内容が難解で理解が進まないケースが多いです。
この場合、
「読んだつもり」
でも実際は
「読んでいない」
と自己認識することが、次のステップを明確にするための第一歩です。
2 契約書の審査を受ける目的を確認する
次に、弁護士に相談する目的を整理します。以下の3つの目的のいずれに該当するかを明らかにすることが必要です。
(1)代読の要請
契約書が難解で、自分では理解できないため、内容を平易な言葉で説明してもらう目的です。
この場合、特に
「全体的な概要を知りたい」
のか、
「特定の部分に焦点を当てたい」
のかを明示するとよいでしょう。
(2)契約書の確認・把握のみ
契約内容自体は会社や依頼者が既に承認している状態で、特に修正依頼やコメントを求めるわけではないが、弁護士にも目を通してもらい、事前認識を共有しておく目的です。
これは、後のトラブル対応やアドバイスをスムーズにするための準備的な確認作業といえます。
(3)校正や助言を目的とする場合
契約内容に関して具体的な助言や修正依頼を行いたい場合です。
これにはさらに以下の3種類があります。
(ア)リスク・アセスメントの要請
特定の条項が持つリスクを洗い出し、その結果、当方がどのような責任や義務を負うのか明確化したい場合。
(イ)特定条項の起案依頼
条件やリスクを防ぐための具体的な条項を、新たに作成してほしい場合。
(ウ)交渉上の助言や対策要請
責任や義務を負いかねる箇所について、交渉のロジックや対案を作成してほしい場合。
3 自分で契約書を把握するための準備
契約書が英語で作成されている場合、まずは自分自身で内容を理解する努力が必要です。弁護士との相談をスムーズにするためにも、以下のステップを推奨します。
(1)契約書を和訳する
契約書を一旦日本語に翻訳することで、内容の大まかな理解が進みます。
翻訳時にはオンラインツールを利用することもできますが、専門用語や契約特有の表現を誤訳しないよう注意が必要です。
可能であれば、弁護士が理解しやすいように該当箇所にコメントを加えると効果的です。
(2)疑問点や不明点を明確にする
契約書を読んで分からない箇所を付箋やメモで整理し、具体的な質問としてまとめておきます。
「どこが分からないか」
を明確化するだけでも、弁護士との打ち合わせが効率的に進みます。
4 相談の準備を整える
契約書の整理が済んだら、弁護士に相談する前に以下を準備しておきましょう。
(1)契約書の全体像
契約書の目的や主な取引内容を簡単にまとめます。
「何のための契約か」
が弁護士に伝わることで、より的確なアドバイスを得られます。
(2)気になる条項の整理
自分で把握した上で、特にリスクが懸念される部分や、不明瞭な条項をリストアップしておきます。
(3)具体的な依頼内容を明示
「代読」
「確認」
「リスク・アセスメント」
など、自分の目的に応じた依頼内容を具体的に弁護士に伝えることが大切です。
<例>
・「契約書全体像」として「この契約は○○を購入するためのもので、取引金額は〇〇円」といった基本的な概要を書きます。
•「気になる条項の整理」として、「第5条の納期遅延に関する違約金が不明確に感じられるので、この条項を確認したい」とリスト化する。
まとめ
契約書の相談準備では、契約書をまず自分でどれだけ理解できたかを確認し、その上で
「相談の目的」
や
「気になるポイント」
を整理することが重要です。
特に英語の契約書の場合、和訳から始めて、少しずつ
「ミエル化」
させることが相談を成功させる第一歩です。
以上は、英文契約書だけでなく、日本語の契約書について、相談するときにも当てはまることは、いうまでもありません。
弁護士とのやりとりを効率的に進めるために、具体的な要望を整理してから臨みましょう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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