02106_企業法務ケーススタディ:内容証明への回答は、この二段構えで攻める

<事例/質問>

相手から内容証明が送られてきました。

「えっ、これってどういう意味?」
「無視したらダメ?」
「すぐに返信しないとまずい?」

はじめてのことなので、社内で大騒ぎとなりました。

相手方は、自分の会社よりも規模が大きく、世間的な認知度も評価も高いです。

ケンカになることは避けられません。

そこで、
「回答書をどのように送るのが正しいのか?」
を考えました。

落ち度のない対応をしたいので、 ①~⑤の選択肢を検討しています。

① 相手にまずFAXを送り、その後、正式に内容証明として送る
② 相手に直接、内容証明を送る
③ 相手に電子メールで送る
④ 相手に普通郵便で送る
⑤ それ以外の方法

どれが有効でしょうか。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

内容証明が届いた=「戦いのゴングが鳴った」

まず、大前提として覚えておいてほしいのは、内容証明が届くということは、相手が正式に
「ケンカを売ってきた」
ということです。

「いやいや、そんな大げさな……」
と思われるかもしれませんが、実際に内容証明ということは、それなりに手間がかかる作業です。

普通の手紙やメールではなく、わざわざ内容証明という手段を使ってきたということは、
「きちんと証拠を残したい」
「言い逃れできないようにしたい」
という相手の明確な意思表示です。

つまり、これは単純意見交換ではなく、
「戦争が始まるぞ」
というサインだと考えたほうがいいのです。

「回答書」はどう送りますか?

結論として、最適な方法は次のとおりです。

「金曜日の夕方」にFAXを送る → その後、正式に内容証明を送る。

1 「まずFAX送信」の理由

FAXで先に送ることで、
「あなたの主張、確かに受け取った」
という意思を明確に示します。

内容証明は郵送のため、相手の手元に届くまで時間差が発生します。

ただし、FAXなら即時に相手に届くため、
「こちらもちゃんと対応しています」
「なめるなよ」
というメッセージを送ることができます。

また、FAXを送ることで、
「すぐに対応してきたな」
という印象を与え、こちらの姿勢をアピールすることも可能です。

2 その後、内容証明

FAXだけでは、正式な証拠にはなりません。

そこで、意思決定の内容証明郵便を送り、
「正式な回答として、これが意思表示だ」
と示すことが重要です。

これによって、相手方に対して、法的な対応を考慮した毅然とした態度を示すことになるのです。

3 「金曜日の夕方」にFAXする理由

ここで重要なポイントとなるのが、FAXを送るタイミングです。

ただ送るのではなく、
「金曜日の夕方」
に送ることが重要です。

これには、次のような効果が期待できます。

(1)相手に「モヤモヤ」を持ち越させる

金曜日の夕方にFAXをすることで、相手は
「週末を落ち着いて眠れなくなる」
可能性があります。

通常、金曜日の夕方は
「仕事を片付けて週末に備える時間帯」
です。

そこへ、いきなりFAXが届くとどうなるか?

「えっ、こんなタイミングで反撃が来た・・・」
「週末その間どう対応するか考えなきゃ・・・」
という状況になり、相手は週末の間ずっとこの問題を意識せざるを得なくなります。

このように、相手に余計なストレスを与えることができます。

4 すぐに決断しにくい状況を作る

FAXを受け取った相手方が、
「よし、すぐに戦おう!」
と思っても、すでに会社の営業時間が終わりかけている場合が多いものです。

企業によっては、意思決定者がいない、ということもあります。

すると、相手は
「すぐに対応できない」
「どうするか週末考えなければいけない」
という状況になり、こちらが心理的に優位に立つことができます。

つまり、
「相手にとって最も嫌なタイミング」
で攻めることで、戦略的に有利な立場を築くことができるのです。

まとめ:「金曜日の夕方」にFAX→その後、内容証明で攻める

内容証明が届いたら、それは戦争開始の合図です。

このシーンでは、
「どう対応するか」
が非常に重要になります。

ベストな選択肢は、
「金曜日の夕方にFAXで送る」→「その後、内容証明を送る」
という二段構えの戦略です。

これにより、
・「すぐに対応する」ことで相手にプレッシャーを与える
・「記録を残す」ことで、厳密な意思表示をする
・「週末のモヤモヤ」を相手に持ち越させ、心理的な優位に立つ
ことができます。

内容証明が届いても焦らず、冷静に、適切な方法で回答書を送りましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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