02111_訴訟費用を青天井にしないために。海外弁護士と戦う心得

契約書のレビューを依頼する際は、質問の仕方が重要です。

特に、経済条件の設計がゲームプランの鍵を握る場合、経済合理性が維持されている限りは問題ありません。

しかし、訴訟になったときの条件を明確にしておかないと、大きなリスクを抱えることになります。

たとえば、
「月額●●●●ドルで弁護士費用を支払う」
とだけ決めていると、訴訟が延々と続く可能性があります。

特に海外の弁護士は、日本の弁護士とは報酬体系や仕事の進め方が異なります。

多くの場合、時間単位で課金されるため、訴訟が長引くほど彼らにとっては利益になる構造になっています。

つまり、何も手を打たなければ、
「可能な限り長く報酬を得る」
方向に進んでしまうのです。

これでは、いつ終わるかわからないマラソンレースに参加しているようなもの。

そのため、
「総額キャップ」
を設定することが不可欠です。

「2年続こうが、3年続こうが、総額●万ドルで打ち止め。あとはそちらの負担で遂行」

こう決めておけば、訴訟のコストをコントロールでき、現地弁護士にも
「どこまでが限界か」
を示すことができます。

さらに、交渉時にも
「こちらはこの金額までしか払わない」
と明確に伝えられるため、無駄な引き延ばしを防ぐことができます。

また、訴訟の際の条件が決まらないまま交渉に入ると、和解が破談したときに速やかに訴訟へ移行できなくなります。

戦費(ファイトマネー)がない状態で本格的な戦いを始めると、
「こいつら、本気で戦うつもりがないな」
と相手に見透かされ、交渉の主導権を奪われることになります。

ですから、あなた自身、こう問いかけてください。

1 訴訟になった場合の総額予算上限はいくらか? それを明確にせよ。

2 これが決まらなければ契約はできない。 訴訟に突入した後、「ファイトマネー(弁護士費用など)の都合で途中でやめる」などと言っていたら、相手にナメられるぞ。

この部分を決めずに契約してしまうのは、剣も盾も持たずに戦場に立つようなものです。

相手に
「どうぞ好きなだけ攻めてください」
と言っているのと同じ。

たとえば、ケビン・コスナー主演の映画なら、雇われた弁護士は仕事をダラダラと引き延ばし、●●●●ドルをできるだけ長くもらう方向で動くでしょう。

それを防ぐためにも、
「どこまで支払うのか」
を事前に決める必要があります。

契約の前に、必ず総額キャップを設定すること。

それが、海外訴訟で
「勝てる体制」
を作るための第一歩です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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