契約書を作るのは、最後の最後です。
いきなり契約書を交わそうとする人がいますが、それでは順序が逆。
肝心の中身が決まっていないのに契約書を作ったところで、あとから矛盾や問題が噴出するのは目に見えています。
では、契約書の前に何を考えるべきか? 具体的には、以下のようなものが必要になります。
これらがしっかり固まったうえで、ようやく契約書の出番がやってきます。
1 事業の概要:
そもそも、どんな事業をやるのか? 誰に向けて、どんな価値を提供するのか? ここがあいまいでは、計画も契約も成り立ちません。
2 投資回収シナリオ(社内経費を含めた投資回収):
いくら投資し、いつ・どのように回収するのか? 利益が出るまでの道筋を明確にすることが重要です。これを無視すると、後になって「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
3 プロジェクトの概要:
事業を具体的にどう進めるのか? 誰が何を担当するのか? 目標やマイルストーンを整理し、事業の全体像をつかみます。
4 募集の方法:
資金調達やパートナーの募集をどう行うか? 募集の条件や方法を考えておかないと、必要な人材や資金が集まらず、計画が頓挫することになります。
5 実施のためのスケジュール:
事業を進めるための具体的なスケジュール。いつまでに何をするのかを決めておかないと、場当たり的な対応になり、スムーズに進みません。
6 事業遂行上予測される問題点と対策:
事業には必ずリスクが伴います。どんなリスクがあり、どう対処するのか? ここを考えずに始めるのは、無防備で戦場に飛び込むようなものです。
契約書が先ではダメな理由
契約書を先に作る人は、
「とりあえず契約すれば大丈夫」
と考えがちです。
しかし、事業の内容が明確でなければ、契約書にどんな条項を盛り込むべきかも判断できません。
たとえば、
「利益が出たら○%を分配する」
と契約書に書いたとします。
でも、利益がいつ出るのか、どのように計算するのかが決まっていなければ、この条項は実際には機能しません。
下手をすると、後から
「そんなつもりじゃなかった」
「言った・言わない」
のトラブルに発展する可能性もあります。
契約書は、あくまで事業の設計図ができてから、最後に
「決めたことを書き留める」
もの。
いきなり契約書を作るのは、設計図なしで家を建てるようなものです。
どこにドアをつけるかも決まらずに、いきなり工事を始めたら、あとで大工さんと揉めることになりますよね?
「行き当たりばったりの博打」を避けるために
これらをすっ飛ばして契約書だけ交わすのは、まさに
「行き当たりばったりの博打」
です。
契約書を作っただけで安心してしまい、実際には何の準備もできていない。
結果として、途中で資金が尽きたり、トラブルが発生したりして、事業が失敗に終わるケースは少なくありません。
大事なのは、
「契約書を作ること」
ではなく、
「事業を成功させること」。
そのためには、まずしっかりと計画を立て、リスクを見極め、シナリオを描くことが先決です。
契約書は、そうした準備のすべてが整ったうえで、最後の仕上げとして作るものなのです。
事業を博打にしないために、順序を守りましょう。
契約書は、最後です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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