02121_雇用は結婚と同じ。始めるのは簡単、別れるのは大変

雇用関係は、結婚と似ているとよく言われます。

最初は
「この人と一緒に働きたい!」
と思って契約を交わしますが、いざ関係を解消しようとすると、思った以上に手続きが厄介だったり、相手が納得しなかったりして、スムーズに進まないことが多いからです。

たとえば、恋愛なら、気持ちが冷めたら
「ごめん、別れよう」
と言えば、それで終わるかもしれません。

しかし、結婚となると話は別です。

結婚生活がうまくいかなくなって
「もう無理だから離婚したい」
と思っても、相手が同意しなければ簡単には終われません。

慰謝料や財産分与、親権など、さまざまな問題が絡んできます。

雇用も同じです。

最初に契約するときは簡単ですが、いざ辞めてもらおうとすると、
「なぜですか?」
「納得できません」
「不当解雇だ!」
「そんな話は聞いていない!」
とトラブルになりがちです。

特に、問題社員ほど辞めたがらないものです。

会社にとっては痛手ですが、本人にとっては
「居心地が良い場所」
を手放したくないわけです。

だからこそ、最初が肝心です。

「この契約は、ずっと続くものではない」
「更新は確約されていない」
ということを、最初から明確にしておくことが重要です。

社員に
「ずっと働ける」
と思わせないことが重要なのです。

先日、顧客から依頼された雇用契約書をチェックしたところ、契約更新について曖昧な表現がありました。

企業側の意図としては
「更新は確約しない」
つもりだったのでしょうが、文面だけを見ると、社員側が
「当然更新されるものだ」
と思い込む可能性があるものでした。

こうした曖昧さが後々の揉め事を生むのです。

たとえば、賃貸契約をするときに
「2年契約ですが、更新は貸主の判断次第です」
と明確に書かれていれば、
「ずっととここに住める」
とは思いません。

しかし、
「原則更新」
と書かれていたら、
「普通に更新されるんだろう」
と期待するでしょう。

雇用契約でも同じで、
「ずっとここで働ける」
と、更新の期待を持たせ”ない”ことが大切なのです。

雇用は結婚と同じで、始めるのは簡単ですが、終わらせるのは難しいものです。

だからこそ、最初の契約段階でルールを明確にしておくことが、後々のトラブルを防ぐカギになります。

トラブルを防ぐためには、契約書の文言をしっかり作り、曖昧な期待を持たせ”ない”ようにする――これが、会社を守るための大切なポイントなのです。

雇用関係も、
「契約するのは簡単、解除するのは難しい」
という前提を忘れずに、慎重に進めることが大切です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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