企業経営において、適切な人員配置は非常に重要です。
役割が明確でバランスよく配置されていれば、業務はスムーズに進み、生産性が向上します。
しかし、企業が成長するにつれて、無駄が増えたり、業務の偏りが生じたりすることも少なくありません。
最近、ある企業の組織体制を精査する機会がありました。
その企業では、スタッフの業務を次のように分類していました。
1 プロデューサー
2 ディレクター
(以上、マネージャー職)
3 プランナー
4 デザイナー
5 エンジニア
6 アドミニストレーター
7 作業員
この分類をもとに人員配置とコストを分析したところ、組織のバランスが大きく崩れていることが分かりました。
人員もコストも過剰である一方で、重要なポジションを担うべき人材がほとんどいなかったのです。
組織のバランスが崩れた原因とは
まず、企業の意思決定や業務の指揮をとるプロデューサーやディレクターがまったくいませんでした。
さらに、IT部門においても、技術の基盤を支えるエンジニアが不在でした。
これでは、企業全体の方向性を決めたり、技術的な課題を解決したりする力が弱くなってしまいます。
また、企画職であるプランナーは経営本部が担っていました。
しかし、本来、経営本部は企業全体の戦略を考えるべき組織です。
企画業務まで兼務してしまうと、現場での実行力が弱くなり、組織の機能が不十分になってしまいます。
アドミニストレーターについても、役割があいまいでした。
企業の運営を支えるバックオフィス業務は重要ですが、その機能が中途半端になっているため、経営のサポート体制が不十分になっている印象を受けました。
さらに、デザイナーはすべて子会社に任せており、本社にはいませんでした。
デザイン業務を外部に委託するのは合理的な判断のように思えますが、本社と子会社の間で業務の切り分けがうまくできていないため、指示や調整に手間がかかっている状態でした。
結果として、本社には半人前のアドミニストレーターと、大量の作業員がいるだけという状況になっていました。
重要な意思決定をする人材が不足し、専門的な業務を担う人もいない一方で、作業員だけが増えてしまったのです。
これでは組織としての効率が悪く、コストも無駄にかかってしまいます。
オーナー経営者の本音と組織改革の必要性
この状況を受け、オーナー経営者は
「本部の人数を徹底的に効率化し、余剰人員を新規事業に回したい」
と考えました。
経営者として、企業を成長させるためには、無駄なコストを削減し、戦略的な人員配置を行うことが不可欠です。
そのため、組織改革を進めるのは当然の流れといえます。
では、具体的にどのように組織を見直せばよいのでしょうか。
企業法務弁護士が果たす役割
このような場面で、企業法務弁護士の視点が重要になります。
弁護士の仕事というと、契約書のチェックや法律トラブルの対応が中心だと思われがちですが、それだけではありません。
経営者の視点に立ち、組織の課題を抽出し、解決策を提案することも、企業法務弁護士の大切な役割の一つです。
例えば、以下のようなアプローチが考えられます。
1 人員配置の最適化
組織体制を見直し、不足しているプロデューサーやディレクター、エンジニアを補強する一方で、不要なポジションを削減します。
これにより、組織全体のバランスを整えます。
2 業務プロセスの整理
業務の重複をなくし、経営本部と現場の役割分担を明確にします。
これにより、意思決定のスピードを上げ、組織の機能を最大化できます。
3 コスト削減と資源の再配分
余剰人員を新規事業へシフトさせ、企業の成長戦略に沿ったリソース配分を行います。
4 法的リスクの管理
組織改革に伴う労務問題や契約の見直しを行い、法的なリスクを未然に防ぎます。
企業が組織改革を行う際には、人員削減や再配置に伴い、労務トラブルや法的な問題が発生することもあります。
だからこそ、経営戦略と法務の両面からアプローチできる企業法務弁護士の存在が、経営者にとって強力なサポートとなるのです。
まとめ:組織改革は企業の成長のチャンス
今回のケースでは、企業の組織体制を見直すことで、大幅な効率化とコスト削減が可能であることが分かりました。
組織のバランスが崩れたままでは、無駄なコストがかかるだけでなく、意思決定の遅れや業務の停滞を引き起こすリスクがあります。
経営者が
「組織を変えたい」
と考えたとき、それを実現するための戦略的なアプローチが求められます。
その際、企業法務弁護士が果たす役割は大きいです。
ただ法律を扱うだけでなく、経営の視点を持ちながら最適な解決策を提案できる弁護士こそが、これからの企業経営に必要とされる存在なのではないでしょうか。
組織改革は、単なるコスト削減ではなく、企業の成長を加速させるための大きなチャンスです。
適切な戦略と専門家のサポートを活用しながら、最適な組織づくりを進めていくことが重要です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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