弁護士への依頼には、大きく分けて2つの形があります。
ひとつは、日常的な法律相談や契約書チェックなどを継続して依頼できる
「顧問契約」。
もうひとつは、必要なときだけ単発で依頼する
「スポット契約」
です。
当事務所には、専門性や実績を評価いただき、大手の弁護士事務所でも手に負えなかった案件が、紹介を通じて持ち込まれることも少なくありません。
こうした場合、当事務所としては、依頼者側に次の手順をしっかり踏んでいただく必要があると考えています。
1 まず、依頼者は、顧問弁護士チームに正式に相談する
2 顧問弁護士チームが「対応できない」と判断した場合は、その事実を明確に示してもらう
3 そのうえで、依頼者は顧問弁護士チームの報酬をスポット弁護士に明らかにし、適正な条件で依頼する
この流れを省略して話を進めてしまうと、次のような残念な結果を招きかねません。
1 うまく解決した場合は「すべて顧問弁護士チームの手柄」
2 失敗した場合は「スポット弁護士が余計なことをしたからだ」と責任転嫁される
さらに問題なのは、スポット弁護士だけでなく、案件を紹介した方までもが
「なぜこんな弁護士を紹介したのか」
と責任を問われるリスクがあることです。
こうなれば、最終的には誰も得をしない、残念な展開になってしまいます。
この状況は、あえてたとえるなら、企業内で本来は担当部門が責任を持って処理すべき案件を、上層部の判断で外部のコンサルタントに丸投げするようなものです。
そして、成果が出れば
「うちの社員が頑張った」
となり、失敗すれば
「外部のアドバイスが悪かった」
とされる。
本来の担当が責任を果たさないまま外部を使うのは、組織運営として非常に危険な行為と言えるでしょう。
だからこそ、最初の段階でしっかりと責任範囲の線引きをすることが何よりも重要になります。
まずは、依頼者自身が自分の責任で動くことが大切です。
予算の範囲内で顧問弁護士チームに対応させ、その成果をきちんと出させるべきでしょう。
もし、顧問弁護士チームから成果が出てこない場合は、契約書の取り交わしがない限り、支払いを拒否すればよいのです。
一方で、
「スポット弁護士に依頼したら、顧問弁護士チームに義理が立たない」
と依頼者が心配するのであれば、スポット弁護士への報酬は、社長のポケットマネーから支払えばよいでしょう。
専門家に依頼する以上、最初の段階でルールや責任の所在を明確にすることが、関わるすべての人を守ることにつながります。
スポット依頼だからこそ、慎重に進める必要があるのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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