02140_ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化が、経営を守る_01議事録は「記録」ではなく「責任の設計図」

議事録は「ただの記録」ではない

ある会社で、こんなトラブルがありました。

数か月前の取締役会で、
「新商品Aを3か月以内にローンチする」
という方針が共有されたはずでした。

ところが3か月後、計画は大きく遅れ、
「誰が、どこまでやるか」
が曖昧なまま、プロジェクトは大幅に遅れ、立ち往生していたのです。

原因をたどると、議事録の内容に問題がありました。

通り一遍のことがふわっと書かれていました。

・誰が何を発言したかが記録されていない
・議題ごとの整理がされておらず、議論の流れが見えない
・決定事項が「宿題化」されているが、担当者と期限が記載されていない

一見すると、
「些細なミス」
に見えるかもしれません。

しかしこれは、ビジネスにおける
「法的リスク」

「プロジェクト停滞」
の引き金となりかねない、重大な実務上の落とし穴です。

「決まったはず」のことが、なぜ進まないのか?

ビジネスの現場で頻繁に起きるのが、
「言った・言わない」問題
です。

契約書ほど明文化されていないこの問題は、実務における“空白”として、しばしば業務を停滞させます。

議事録が曖昧だと、
・「誰が発言したか分からない」→責任の所在が曖昧になる
・「何が決まったか分からない」→決定事項が再び議題に上がる
・「誰がやるか書いていない」→実行されず棚上げになる

このような状況では、決定が
「決定」
として組織に機能しません。

つまり、実行の起点であるべき議事録が、
「ただの報告メモ」
にとどまってしまっているのです。

議事録は「責任」を記録するもの(企業法務の視点から)

議事録とは、
「誰が何を決め、誰がその責任を負うのか」
を明記する、責任の設計図であるべきです。

特に、株主総会や取締役会のように法的意味を持つ会議体では、以下の3点が不可欠です。

・発言者の明記(例:代表取締役〇〇が発言)
・議題ごとの整理(トピック単位のスレッド管理)
・決定事項に対する責任者と期限の明記

これらを怠ると、後に
「誰がどのような根拠で決定したか」
が問われた際、組織としての説明責任を果たせなくなるおそれがあります。

株主や監査役、時には取引先からの信用問題にも発展しかねません。

また、会議体の運営を担う事務局には、
「決まっていないことを明らかにし、必要に応じて詰める」役割
があります。

曖昧な合意には確認を入れ、担当者が未定であればその場で指名を促すべきです。

こうした“ひと手間”が、プロジェクトの進行だけでなく、法務的なリスクヘッジにもつながります。

ビジネスの現場では、
「記録の精度」
が、そのまま
「責任の所在」

「信頼性」
につながります。

だからこそ、議事録は単なるメモではなく、経営と法務の土台となる
「実務ドキュメント」
として位置づけるべきなのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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