「逆粉飾、できますか」。
儲かっている会社を、意図的に赤字に見せかける。
通常の粉飾決算と真逆のこの発想は、裏技ではなく、ただの違法行為です。
逆粉飾を行えば、金融商品取引法・会社法・税法のいずれにも抵触します。
その瞬間に、経営者個人の責任が直撃します。
追徴課税や課徴金だけでは終わらない。
損害賠償、刑事責任、そして金融機関・取引先からの信用失墜。
一度の違法が、事業全体を奈落へ引きずり込みます。
「再生のための一時的な調整だから大丈夫」という理屈は通りません。
目的が何であれ、虚偽の数字を出した時点で法違反です。
逃げ道はありません。
では、経営者が本当にやるべきことは何か。
第1に、逆粉飾の禁止を明文化し、役員会の誓約事項に組み込む
第2に、会計処理の判断を二重の承認ルートで確認し、根拠資料を必ず残す
第3に、在庫・引当金・収益認識といった高リスク科目を定期的に点検する
この3点を守るだけで、不正の芽は大幅に摘めます。
さらに重要なのは、問題が発覚したときの初動です。
修正仕訳、再開示、関係者への通知、責任の明確化――是正手順を事前に定め、迅速に動く準備を整えておく。
「隠す」
のではなく
「正す」。
これが組織の持続性を守る唯一の道です。
結論は明白です。
逆粉飾は、経営の延命策でも、裏技でもない。
ただの違法行為です。
経営者に残されるのは2つの選択肢しかありません。
数字を操作して一瞬を稼ぎ、すべてを失うか。
現実を直視し、制度の正面から再生の道を選ぶか。
答えは自明です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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