02187_逆粉飾は経営の裏技ではない。経営者を直撃する違法リスク

「逆粉飾、できますか」。

儲かっている会社を、意図的に赤字に見せかける。

通常の粉飾決算と真逆のこの発想は、裏技ではなく、ただの違法行為です。

逆粉飾を行えば、金融商品取引法・会社法・税法のいずれにも抵触します。

その瞬間に、経営者個人の責任が直撃します。

追徴課税や課徴金だけでは終わらない。

損害賠償、刑事責任、そして金融機関・取引先からの信用失墜。

一度の違法が、事業全体を奈落へ引きずり込みます。

「再生のための一時的な調整だから大丈夫」という理屈は通りません。

目的が何であれ、虚偽の数字を出した時点で法違反です。

逃げ道はありません。

では、経営者が本当にやるべきことは何か。

第1に、逆粉飾の禁止を明文化し、役員会の誓約事項に組み込む
第2に、会計処理の判断を二重の承認ルートで確認し、根拠資料を必ず残す
第3に、在庫・引当金・収益認識といった高リスク科目を定期的に点検する

この3点を守るだけで、不正の芽は大幅に摘めます。

さらに重要なのは、問題が発覚したときの初動です。

修正仕訳、再開示、関係者への通知、責任の明確化――是正手順を事前に定め、迅速に動く準備を整えておく。

「隠す」
のではなく
「正す」。

これが組織の持続性を守る唯一の道です。

結論は明白です。

逆粉飾は、経営の延命策でも、裏技でもない。

ただの違法行為です。

経営者に残されるのは2つの選択肢しかありません。

数字を操作して一瞬を稼ぎ、すべてを失うか。

現実を直視し、制度の正面から再生の道を選ぶか。

答えは自明です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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