「法的整理は最後の手段だから、できれば避けたい」。
多くの経営者がこう考えます。
しかし、この理解は誤りです。
法的整理の本質は清算ではなく再生です。
裁判所の制度を使い、債権関係を整理し、時間を確保するための正規の手続です。
任意の交渉では行き詰まった場面で、秩序を回復するために用意された仕組みです。
禁じ手ではありません。
誤用と遅延こそが致命傷を招きます。
遅れれば遅れるほど、条件は悪化します。
金融機関も取引先も
「もう持たない」
と判断した瞬間に引きます。
判断を遅らせれば、支援者も選択肢も消えます。
実例を挙げましょう。
D社は
「続けたい」
に囚われ判断を遅らせ、手続の初回説明でも根拠資料を示せなかった。
その結果、条件は一気に不利となり、残された道は限られました。
一方、E社は早期に法的整理を選択し、事前に事業価値の核と守るべき雇用を整理していた。
スポンサー候補との調整も進んでおり、再建の道を確保できました。
差を分けたのは損益ではなく、タイミングと準備でした。
結論は明白です。
法的整理は怖れるものではない。
怖れるべきは、先送りと不備です。
必要なのは、早期に判断し、制度を正しく使い切る覚悟です。
経営を守るのは
「気持ち」
ではなく、手順と決断です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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