02188_法的整理は禁じ手ではない。遅延と不備が会社を追い込む

「法的整理は最後の手段だから、できれば避けたい」。

多くの経営者がこう考えます。

しかし、この理解は誤りです。

法的整理の本質は清算ではなく再生です。

裁判所の制度を使い、債権関係を整理し、時間を確保するための正規の手続です。

任意の交渉では行き詰まった場面で、秩序を回復するために用意された仕組みです。

禁じ手ではありません。

誤用と遅延こそが致命傷を招きます。

遅れれば遅れるほど、条件は悪化します。

金融機関も取引先も
「もう持たない」
と判断した瞬間に引きます。

判断を遅らせれば、支援者も選択肢も消えます。

実例を挙げましょう。

D社は
「続けたい」
に囚われ判断を遅らせ、手続の初回説明でも根拠資料を示せなかった。

その結果、条件は一気に不利となり、残された道は限られました。

一方、E社は早期に法的整理を選択し、事前に事業価値の核と守るべき雇用を整理していた。

スポンサー候補との調整も進んでおり、再建の道を確保できました。

差を分けたのは損益ではなく、タイミングと準備でした。

結論は明白です。

法的整理は怖れるものではない。

怖れるべきは、先送りと不備です。

必要なのは、早期に判断し、制度を正しく使い切る覚悟です。

経営を守るのは
「気持ち」
ではなく、手順と決断です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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