「もう少し頑張れる」。
この言葉ほど危険な判断はありません。
経営の現場で使われるとき、それはすでに遅れている兆候です。
再生において最大の敵は、遅延です。
資金が尽きる直前では、スポンサー探索も事業譲渡も分社化も消えます。
選択肢は机上から消え、資金繰りに追われるだけになります。
だからこそ、基準を決めておくことが不可欠です。
・手許資金の残存週数が社内基準を割ったとき
・主要借入のリファイが不成立になったとき
・売上上位顧客の解約が続いたとき
このいずれかが発生したら、即座に顧問弁護士と財務の専門家を同席させ、任意の打ち手と法的手続を並べて比較する。
ここでの判断を1日遅らせれば、その分だけ価格と時間の不利を背負います。
実例を挙げます。
H社は資金残高が4週を切った時点で早期にスポンサー探索へ舵を切り、事業譲渡と雇用維持を両立させました。
一方、I社は資金の尽きを認めず、決断を遅らせた。
資金ショート直前に制度に駆け込んだが、引き受け先は見つからず、清算に傾いた。
差を生んだのは業績ではなく、判断のタイミングでした。
結論は明白です。
法的整理の使いどきは、資金が尽きる直前ではなく、もっと早期にあります。
経営を守るのは“前向きな気持ち”ではない。
数値に基づき、止めるべきときに止める決断です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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