「法的整理をするか、しないか」。
経営会議でこの二択が議論されているとき、その時点で問いが浅い証拠です。
経営に問われているのは、制度に入るか否かではありません。
本当に問われているのは、
「どの未来を選ぶか」
です。
選択肢は複数あります。
(1)既存経営陣での継続(コストの再設計)
(2)社内承継や外部プロ経営者の導入
(3)M&Aやスポンサー型の再建
(4)法的整理を通じた再生
正解は1つではありませんし、どれを選ぶかは、損益の良し悪しでは決まりません。
従業員、金融機関、主要取引先、株主――それぞれの利害と痛みを並べ、どの案が総和を最大化するかで決まります。
だから、最初に描くべきは
「利害調整の地図」
です。
誰にどの負担を求め、誰にどの利益を残すのか。
その配分から、最適解を導き出すことです。
全体像がない議論は、結局
「延命か清算か」
という粗い二択に戻り、再建の機会を失います。
実例を挙げます。
L社は資金難に陥った際、
「清算か再建か」
の二択で議論を絞り込みました。
それは利害関係者の負担や利益を無視するかたちとなり、結果として、取引先との交渉は進まず、従業員への説明も割れ、最終的に支援の芽は消えました。
一方、M社は早期に利害調整の地図を描きました。
従業員には雇用の枠を示し、金融機関には債権放棄と引き換えに新規事業の青写真を提示した。
結果として、スポンサー候補との調整も進み、複数の選択肢を保持したまま再建に入れました。
差を分けたのは、損益ではなく
「問いの立て方」
でした。
結論は単純です。
問うべきは、
「法的整理をするかしないか」
ではない。
「どの未来を選ぶか」
です。
選択を先延ばしすれば、その未来は他人に決められることになるのです。
要するに、選択を先延ばしにする=未来は、裁判所と債権者に握られる、ということです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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