02191_「法的整理か否か」ではない。経営は「どの未来を選ぶか」

「法的整理をするか、しないか」。

経営会議でこの二択が議論されているとき、その時点で問いが浅い証拠です。

経営に問われているのは、制度に入るか否かではありません。

本当に問われているのは、
「どの未来を選ぶか」
です。

選択肢は複数あります。

(1)既存経営陣での継続(コストの再設計)
(2)社内承継や外部プロ経営者の導入
(3)M&Aやスポンサー型の再建
(4)法的整理を通じた再生

正解は1つではありませんし、どれを選ぶかは、損益の良し悪しでは決まりません。

従業員、金融機関、主要取引先、株主――それぞれの利害と痛みを並べ、どの案が総和を最大化するかで決まります。

だから、最初に描くべきは
「利害調整の地図」
です。

誰にどの負担を求め、誰にどの利益を残すのか。

その配分から、最適解を導き出すことです。

全体像がない議論は、結局
「延命か清算か」
という粗い二択に戻り、再建の機会を失います。

実例を挙げます。

L社は資金難に陥った際、
「清算か再建か」
の二択で議論を絞り込みました。

それは利害関係者の負担や利益を無視するかたちとなり、結果として、取引先との交渉は進まず、従業員への説明も割れ、最終的に支援の芽は消えました。

一方、M社は早期に利害調整の地図を描きました。

従業員には雇用の枠を示し、金融機関には債権放棄と引き換えに新規事業の青写真を提示した。

結果として、スポンサー候補との調整も進み、複数の選択肢を保持したまま再建に入れました。

差を分けたのは、損益ではなく
「問いの立て方」
でした。

結論は単純です。

問うべきは、
「法的整理をするかしないか」
ではない。

「どの未来を選ぶか」
です。

選択を先延ばしすれば、その未来は他人に決められることになるのです。

要するに、選択を先延ばしにする=未来は、裁判所と債権者に握られる、ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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