02193_ごまかしと先送りを排す。再建の成否を決めるのは「裏技」ではなく、経営者の法務リテラシー

「裏技で切り抜けられる」。

そう考える経営者は少なくありません。

かし、経営危機に必要なのは
「裏技」
ではなく、条件を定め、準備し、決断を実行する力です。

これを私は経営者の法務リテラシーと呼んでいます。

やるべきことは複雑ではありません。

第一に、不正を排除すること。逆粉飾は「言わない・やらない・許さない」と社内で徹底する。

第二に、事実と数字を可視化すること。PL・BS・資金繰り・未来シナリオを揃え、現状を誤魔化さない。

第三に、いつ手続に移るか、誰にどの負担を求めるか――その条件を前もって線引きし、必ず記録に残す。

第四に、利害調整の地図を描くこと。

従業員・金融機関・取引先・株主、それぞれの負担と利益を明らかにする。

第五に、説明責任を果たす準備を整えること。数字と計画を言語化し、関係者に理解させる説明力を備える。

実例を挙げましょう。

R社は、不正を排除し、数字と計画を提示し、切替条件を社内で固め、外部専門家とも前提を揃えていました。

その結果、スポンサー候補との交渉は具体化し、再建に進むことができました。

一方、S社は
「そのうち改善する」
と先送りを重ね、不正に足を踏み入れかけた時点で弁護士に指摘されました。

右往左往の末、数字も計画も示せず、支援の機会を失いました。

結果、取引先の信頼は失われ、支援の道は閉ざされました。

要するに、差を分けたのは損益ではありません。

不正を排除し、数字を示し、条件を線引きし、関係者に説明する――この体制を途切れなく続けられるかどうかです。

経営を守るのは
「強さ」
ではなく
「手順」
です。

ごまかしや先送りではなく、条件を定め、準備し、決断を実行すること。

誤用と遅延こそが、最大の敵なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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