02242_ケーススタディ:FC契約解除は「泥沼の離婚裁判」と同じ? 違約金の一括回収と“ゾンビ営業”を阻止する、本部法務のための「絶縁状(合意書)」作成術

「加盟店がロイヤリティを滞納している。契約解除だ!」 

経営陣がそう決断した時、法務担当者の仕事は
「通知書」
を送って終わりではありません。

むしろ、そこからが本当の戦いです。 

フランチャイズ契約の解消は、こじれた夫婦の離婚によく似ています。 

「金(違約金)は払いたくない」 
「店(看板)はそのまま使わせろ」
「近所で同じ商売を続けさせろ」

そんな加盟店のワガママを許せば、フランチャイズ・チェーン全体の規律(ブランド)が崩壊します。 

本記事では、不良加盟店との関係を“完全かつ不可逆的”に断ち切るための、違約金回収の鬼手と、解約後の
「居抜き営業(競業)」
を封じ込める鉄壁の合意書作成術について解説します。

【この記事でわかること】

• 「分割払い」という甘えを許さず、違約金を満額回収する交渉ロジック
• 解約後の「看板の書き換え営業(競業)」を法的に封殺する方法
• 複数店舗の解約を1枚の紙で仕留める、実務的な合意書のまとめ方

【相談者プロフィール】 

相談者: 株式会社 ショク・イノベーション・チェーン 店舗開発本部長 辛島 厳(からしま げん) 
業種 : 飲食フランチャイズチェーン本部(居酒屋業態)
相手方: 株式会社 独立ダイニング(複数店舗を運営する加盟店)

【相談内容】 

先生、頭が痛いです。 

当社のFC(フランチャイズ)に加盟している企業が、看板料(ロイヤリティ)を数ヶ月滞納しています。 

契約に基づき
「解約」
を通告したところ、相手は
「ない袖は振れない。手元に現金がないから、未払い分も違約金もすべて長期の分割払いにしてほしい」
と泣きついてきました。

回収できないよりはマシかと思い、この分割案に応じるべきか迷っています。

しかも、彼らは契約解除後も、看板だけ掛け替えて、同じ場所で、同じメニューで、居酒屋を続けようとしているフシがあります。 

当社のノウハウを盗んだまま、知らぬ顔で商売を続けられては、真面目にロイヤリティを払っている他の加盟店に示しがつきません。 

相手の言う通り分割を認めて良いのか、そして二度と当社の真似をさせないようにするには、どのような
「合意書」
を結べばよいのでしょうか?

「無い袖は振れない」は嘘? 違約金回収は「一括」が鉄則

辛島本部長、相手の
「金がないから分割で」
という泣き落としに、安易に乗ってはいけません。

FC契約の解除において、金銭回収の鉄則は
「一括払い」
です。

なぜなら、契約が切れた加盟店にとって、本部(御社)はもはや
「生殺与奪を握る親分」
ではなく、
「ただのうるさい債権者」
に成り下がるからです。

一度
「分割」
を許せば、数回払って
「やっぱり苦しい」
と踏み倒されるのがオチです。

ここは心を鬼にして、こう交渉します。 

「FC事業としての規律(ケジメ)の問題です。一括で支払わなければ、即座に訴訟提起し、資産の差押えを行います」

プランB:「分割」を認めるなら「鎖」をつける

もし、どうしても相手が資金調達できず、現実的な回収手段として
「分割」
を認めざるを得ない場合は、ただでは認めません。

以下の
「鎖」
をつけて、逃げられないようにします。

1 金利の上乗せ: 遅延損害金(年14%など)を付加し、「待ってやるコスト」を意識させる
2 連帯保証人の徴求: 代表者個人の連帯保証はもちろん、可能なら資力のある第三者を保証人に立てさせる
3 公正証書化: 裁判なしで強制執行できる「執行認諾文言付き公正証書」を作成させる(費用は相手持ち)

「看板だけ変えればいい」という甘えを断つ(競業避止義務)

次に問題となるのが、解約後の
「ゾンビ営業」
です。

FC契約を解除されたのに、看板を変えただけで、中身は御社のノウハウそのままの店を続ける。

これは、御社のブランドに対するタダ乗り(フリーライド)です。

これを防ぐために、合意書には以下の条項を明記し、相手にサインさせます。

• 競業避止: 「同一店舗および隣接都道府県内において、2年間は同種または類似の事業(居酒屋など)を行ってはならない」
• 違反時のペナルティ: 「違反した場合は、加盟金の3倍の違約金を支払う」

「商売あがったりだ!」
と相手は騒ぐでしょうが、
「それが嫌なら、FC契約を継続してロイヤリティを払うか、違約金を積んで綺麗に別れるか、どちらかです」
と突き放すのです。

複数店舗の解約も「一本釣り」で処理する

相手が複数の店舗を運営している場合、契約書ごとに合意書を作る必要はありません。

「1通の合意書」
にまとめてしまいましょう。

ただし、ドンブリ勘定は禁物です。 

合意書の中で、
「●●店分の違約金〇〇円」
「●●店分の違約金〇〇円」
「10月分の未払い看板料〇〇円」
と、債務の内訳を明確に特定してください。

これが、後で訴訟になった際、
「何の金か分からない」
という言い逃れを許さないための証拠となります。

【今回の相談者・辛島本部長への処方箋】

辛島本部長、今回の戦いは
「情け」
をかけた方が負けです。

 当事務所としては、以下の手順で進めることを推奨します。

1 最強の武器「合意解約書(一括払い型)」の提示 

まずは、違約金一括払い、競業避止(同種営業の禁止)、秘密保持を明記した合意書を突きつけます。

ここで
「債務があること」
を文書で認めさせることが、最大の勝利です。

2 分割の条件闘争 

相手が泣きついてきたら、
「商標の使用即時中止」
「業態の変更(看板替えではなく、全く違う商売にすること)」
を条件に、違約金のみ分割を検討します。

ただし、連帯保証人は必須です。

3 違反時の即時提訴 

もし合意後に隠れて類似営業をしたり、支払いが遅れたりしたら、即座に内容証明で警告し、訴訟へ移行します。

そのための
「債務承認(合意書)」
なのです。

FC本部の威厳を守るため、最後まできっちりと
「ケジメ」
をつけさせましょう。

※本記事は、架空の事例をもとに、フランチャイズ契約の解約実務における違約金回収および競業避止義務に関する一般論を解説したものです。 
実際の競業避止義務の有効性(期間・場所・業種の範囲)は、裁判所の判断により無効とされる場合もあり、事案ごとに慎重な検討が必要です。
個別の事案については必ず弁護士にご相談ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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