「M&Aやファンド組成において、提出されるリーガルレポートの表紙にある『法律事務所のロゴ』は、中身以上にモノを言う」
これは業界の公然の秘密です。
しかし、一流の
「ブランド事務所」
に依頼すれば、目玉が飛び出るような請求書が届きます。
「予算はない、だが信用は欲しい」
そんな二律背反に悩む法務担当者に朗報です。
世の中には、実務部隊は手頃な事務所を使いつつ、表紙には大物弁護士の名前を冠する
「ダブルネーム」
という裏技が存在します。
本記事では、大物フィクサーの威光を借りて
「見栄え」
を最大化するスキームと、その際に絶対に踏み外してはいけない
「礼節(スジ)」
という地雷について解説します。
この記事でわかること:
・実務は「手頃な事務所」、看板は「著名事務所」というハイブリッド戦略の仕組み
・「ダブルネーム」でレポートを発行し、投資家の安心感を醸成するテクニック
・「金はないが心はある」という言い訳が、なぜビジネスの世界で最も無礼とされるのか
相談者プロフィール:
株式会社 ユニバーサル・キャピタル・マネジメント 経営企画室長 栄田 飾(さかえだ かざる)
業種:投資ファンド運営・不動産開発
状況:新規ファンド組成にあたり、投資家向け資料としてのリーガル・デューディリジェンス(DD)レポートが必要だが、予算が極端に少ない。
相談内容:
先生、正直に申し上げます。
カネがありません。
しかし、今回のファンド組成を成功させるためには、出資者となる金融機関や機関投資家を納得させるだけの
「格調高いリーガルレポート」
が必要です。
無名の町弁護士が書いたレポートでは、中身がいくら正しくても
「誰だそれは?」
と一蹴されてしまいます。
かといって、四大法律事務所のようなところに頼めば、数千万円単位のフィーが飛びます。
「いかに費用をかけずに、見た目のいい法律事務所にDDを担当させたことにするか」。
そんな虫のいい解決策はないものでしょうか?
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「虎の威」は借りるものではなく「実装」するもの
栄田室長、その
「虫のいい話」、
やりようによっては可能です。
料理の世界で言えば、下ごしらえは若手がやり、最後の仕上げと監修だけを三ツ星シェフが行って
「巨匠の味」
として出すようなものです。
秘技
「ダブルネーム・スキーム」
の正体は、
「実働部隊」
と
「看板(ブランド)」
を分離することにあります。
手頃な中堅事務所が
「友情価格」
で汗をかき、DDの実務とレポート原案を作成します。
そして、元財務省、著名事務所の客員を務めるような、
「大物弁護士」
に、監修またはアドバイザーとして入ってもらうのです。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「ネームドロップ」の効果と錯覚
最終的なレポートには、
「法律顧問 ●●弁護士(〇〇法律事務所 客員)」
というクレジットを、実務担当事務所と並記(ダブルネーム)して記載します。
これにより、投資家は
「あの大手事務所の●●先生が関与しているなら安心だ」
と錯覚・・・いえ、ご安心召されるわけです。
これを業界用語で
「ネームドロップ」
といいます。
さらに、その大物弁護士が金融界のドンたちに顔が利く場合、単なる法務チェックを超えて、資金調達のパイプラインまで提供してもらえる可能性があります。
まさに
「1粒で2度おいしい」Gリコ
のような展開です。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「金はないが心はある」は禁句中の禁句
ただし、このスキームを使うには絶対的な条件があります。
それは
「礼節(スジ)を通すこと」
です。
大物弁護士は義理人情に厚く、懐に入れば一肌脱いでくれますが、彼らが最も嫌うのは
「無礼者」
です。
「予算がないので、気持ちだけでお願いします」
「お金はないが、心はある」
というセリフは、プロの世界において最も無礼でスジが通らない言い草です。
「貴方の名前には価値があるが、対価は払いたくない」
と言っているのと同じだからです。
最低限の
「見せ金(キャッシュ)」
と、礼を尽くす姿勢が見えない限り、このカードは切れません。
モデル助言:
栄田室長、見栄を張るなら、そのための
「入場料」
は払いましょう。
以下の手順で進めます。
1 ダブルネームでのレポート発行
実務は安価な事務所、監修は著名弁護士という体制を組み、投資家向け資料(特定少数向けレジュメ)に限定して、著名弁護士の名前を記載する許諾を取り付けます。
2 「スジ」を通す資金の確保
「友情価格」
とはいえ、著名弁護士への謝礼と実働部隊への報酬は必須です。
着手金として
「最低限の財力」
を示してください。
それが信頼の証です。
3 紹介者の顔を立てる
このスキームは、紹介者と大物弁護士との人間関係の上に成り立っています。
貴社の不手際は紹介者の顔に泥を塗ることになると肝に銘じてください。
「ブランド」
は高いからこそ価値があるのです。
結論:
ブランドを安く使わせてもらうなら、せめて
「礼儀」
という通貨で不足分を補うのが、大人の流儀というものです。
実務と看板を切り分ける
「ダブルネーム」戦略
を賢く使いこなし、投資家を唸らせる最強のレポートを錬成しましょう。
※本記事は、架空の事例をもとに、専門家の起用戦略および企業間取引におけるリスク管理(レピュテーションリスク等)に関する一般論を解説したものです。
実際のDDや専門家の起用においては、各専門家の所属する事務所の規定や弁護士倫理規定(利益相反等)、および契約内容を遵守する必要があります。
個別の事案については必ず弁護士にご相談ください。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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