審判手続において審判請求が棄却される審決が出された場合、企業としては、東京高等裁判所に審決取消訴訟が提起できます。
まず、この訴訟提起は審決の効力が生じてから30日以内に行わなければならず、迅速に企業としての意思決定を行うべきことが求められます。
むしろ、前述のとおり、審判手続が
「公正取引委員会の構成員である審査官の主張を、同じ公正取引委員会の構成員である審判官が判断する」
という歪な構造を内包していることをふまえるのであれば、企業法務担当者なり担当弁護士としては、当初から審判請求棄却審決が出されることを見越して、東京高等裁判所への訴訟提起の委任を取り付けておくべきともいえます(無論、予想に反して審判段階で望ましい結果が出れば、当該委任を解除してもらえばいいだけです)。
訴訟が始まってからは、相当な苦戦が待ち構えています。
すなわち、審決取消訴訟においては、実質的証拠法則(独占禁止法80条)が採用される結果、公正取引委員会(審判官)が認定した事実は、これを立証する実質的証拠がある限り、裁判所を拘束することになります。
すなわち、審決取消訴訟を提起させる企業側にとって非常に高いハードルが待ち構えることになるのです。
とはいえ、このように高いハードルが存在する審決取消訴訟も、企業側が勝訴している例もあるので、粘り強く弁護を展開すれば、公正取引委員会の非を司法が糺してくれる可能性も絶対に無いとはいえません。
前述のとおり、事実関係に関しては実質的証拠法則が働くため勝訴には高いハードルを乗り越えなければなりませんが、下記のように手続非違に関しては、東京高等裁判所も企業側の主張にきちんと耳を傾けてくれるようです。
その意味で、実体関係のみならず、公正取引委員会の手続非違に関しても厳しくチェックした上で、司法の場で争うことは有益と思われます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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