TOBについては、大量の現金を準備して買い集めることが通常です。
会社法上は、自己株式を対価として利用することも可能とされていますが、ほとんど利用されることはありません。
これは、自己株式を対価とすることが現物出資規制の対象となることと、有利発行規制が働くことが理由とされています。
前者については、価額填補責任が問題になりますし、後者については株主総会の特別決議という手続的負担がネックとなります。
他方、海外においてはインドの鉄鋼メーカーであるミタルグループが自己株をTOBの対価として付与する形での拡大戦略をとって成功してきたということもあり、自己株式をTOBの対価として利用したいという国内企業の要望が高まっていました。
そこで、産業活力再生法においては、自社株式を対価とするTOBの手続的負担を減少させ、さらに、TOBに90%以上の株主が応じた場合には、株主総会を開くことなく少数派株主をスクイーズアウトするという手続も定められました。
TOB規制の趣旨についてですが、TOB規制は、
「取引市場外において相対取引がなされ、それにより会社の支配権の移転が伴うような場合には、当該取引から取り残された株主は、会社の支配権に影響を及ぼしえない者となるため、所有株式の価値が低下することが不可避であるために、そのような者に対しても、公平な値段に基づく株式売却の機会を与えるべきである(支配プレミアムの公平な分配)」
という発想に基づき定められています。
以上の趣旨からすると、外形的にはTOB規制が働きそうな株式の移転があるとしても、その内実をみてみると、支配権の移転を伴わないような場合にまでTOB規制を働かす必要はない、ということがいえます。
このようなロジックを敷行すると、以下のように、一見規制が及びそうなTOB規制を回避するスキームを構築することも可能となります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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