「株式会社には『責任者』などという者は存在しない」
という言い方をすると、
「そりゃ株主はそうかもしれないが、社長や経営幹部はそれなりの責任があるでしょ」
といわれそうです。
しかしながら、ごく一部の例外的な場合を除き、社長や経営幹部、すなわち会社の取締役といわれる方についても、原則として、経営の失敗に関しては法的には無答責であり、会社がつぶれたからといって、社長がケツの毛まで抜かれるようなことはありません。
ここで、会社法における
「経営判断の原則」
という法理を見てみましょう。
経営判断の原則、欧米では
「ビジネス・ジャッジメント・ルール」
といわれるこの法理ですが、会社のトップたちがヘマをやらかし会社の経営がおかしくなった場合の責任追及の場面で顔を出すものです。
曰く
「取締役は日常的な業務執行に関して、一定の裁量を有していると考えられている。元来、経営にあたってはリスクが伴うのが常であり、結果的に会社が損害を負った場合に、事後的に経営者の判断を審査して取締役などの責任を問うことを無限定に認めるならば、取締役の経営判断が不合理に萎縮されるおそれがある。そこで、取締役などの経営者が行った判断を事後的に裁判所が審査することについて一定の限界を設けるものとし、会社の取締役が必要な情報を得た上で、その会社の最大の利益になると正直に信じて行った場合には、取締役を義務違反に問わない」
そうです。
この
「外国語の散文」
ないし
「呪文や祝詞のような奇怪な文書」
ともいえる謎の言語をフツーの日本語に「翻訳」しますと、要するに
「経営に失敗したからといって、なんでもかんでも取締役のせいにしたら、取締役がかわいそうだし、取締役のなり手がいなくなる。なので、よほど悪さをしたのでないかぎり、うっかりチョンボくらい大目に見てやれ」
ということなのです。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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