かつての日本企業の推奨されるべき行動原理は、
「上を見て、横を見て、後ろを振りかえる」
というものでした。
「上を見る」
とは、
「お上、すなわち何事も監督官庁にお伺いを立て、その指導のもとに全て物事を決める」
という経営スタンスです。
また、
「横を見る」
とは、
「業界同士協調しながら、事業を進めていく」
というあり方です。
最後に、
「後ろを振りかえる」
とは、
「迷ったら、今までやってきたことを振り返り、先例を踏襲したり先輩の意見を聞きながら判断を行う」
というものです。
前述のように、日本においては、それほど遠くない昔、官庁主導で産業界の育成が図られていた時代が存在していたのです。
この時代においては、各業界において競争力がもっとも欠落した企業も維持・存続できるような業界育成が行政の最大のミッションと考えられていました。
行政機関は、許認可権限やこれに基づく行政指導などの権限(行政裁量権)を駆使して、業界全体をコントロールしていました。
この方式は、最も船足の遅い船に速度を合わせて、船団が統制を保って進行する戦術になぞらえ、
「護送船団方式」
などと評されていました。
この時代の産業界のキーワードは
「秩序ある発展」
であり、当該秩序は、法律や裁判を通じて明確に確立されるものではなく、行政による裁量や業界間の話し合いなどによって何とはなしに決まっていくものでした。
このような時代において、前述の
「上を見て、横を見て、後ろを振りかえる」
という経営スタイルは、護送船団戦略の実を上げるものとして多いに推奨されたのです。
運営管理コード:YVKSF150TO152
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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