00247_他者の労力やスキルを使う取引の設計:請負と委任と雇用をどのように使い分けるか

「お金をもらって仕事をする」
というのは経済的には単純な話ですが、法律的には、それが請負ないし委任なのか雇用なのかはなかなか悩ましいところです。

悩ましいといっても、理論的な議論だけならいくらでも悩めばいいのですが、税務の問題が絡むと、議論の方向性を誤ると無用な税務リスクに発展するので、慎重に取り扱う必要があります。

さらに、実質的に派遣元が指揮命令を行っているにもかかわらず、雇用以外の契約形態(委任や請負)を採用すると、偽装請負の問題も生じかねません。

SEを使って派遣業務等を行う場合、各エンジニアが独自の裁量で仕事を遂行し、勤怠管理や作業報告義務等も一切行なわないということであれば、独立事業者との請負ないし委任契約という形でも差し支えありません。

エンジニアに仕事の裁量がなく、勤怠管理に服し、作業報告義務までも課されているのであれば、契約名目にかかわらず、雇用という法律関係が形成されているものと見られます。

請負や委任というのは、独立の事業者として義務を遂行するものであり、誰かの指導命令に服するということとは相いれませんから、当たり前といえば当たり前の話なのですが、世の中には契約の名称だけ
「請負」

「委任」
としておけば税務署や労基署も同じように法的におかしな理解をしてくれる、などということを考えられる会社もあるようです。

もちろん税務署も労基署もこんな話をまともに受け取ってくれるほど甘くはありませんので、
「実体が外部行政機関によってどのように認定されるか」
という外部機関認定に関するストレステストを加えて、契約形態を設計しておくべき必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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