思想・感情そのものは保護の対象ではないので、単に着想を得たり、ヒントを得るような程度のものであれば権利侵害とはなりません。
また、既存著作物の題材となっている歴史的又は社会的事実や自然現象について著作したとしてもそのこと自体が著作権侵害となることはありません。
ところで、著作権法27条、28条は、既存の著作物(原作)に、新たな創作性を付与して創作された二次的著作物に関して、二次的著作物についての著作権とは別に、原作の著作権者の権利も別途保護しています。
条文をみてみますと、
著作権法第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
同法第28条 二次的著作物の原著作者の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
とナンノコッチャ、というくらいわかりにくいルールになっています。
畑中鐵丸という作家が
「アンドロメダ銀河からやってきた、愛と平和の弁護士」
というSFロマン小説を書いたとします(かなりつまらなそう)。
この
「アンドロメダ銀河からやってきた、愛と平和の弁護士」
を原作として、ディズニーが映画化しようとする場合(まあ、ないでしょうね)、著作権者である畑中鐵丸は、
「翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有」
していますので、ディズニーのオファーが来ても、
「ヤダよ~。あっかんべー」
と言って、
「どうしても欲しかったら、4000万ドルもって来いや~!」
と言っちゃえる、ということです。
そして、(ディズニーと特段の契約をかわさなかったら、ですが)4000万ドルもらった挙げ句、著作権法28条で、映画版
「アンドロメダ銀河からやってきた、愛と平和の弁護士」(当該二次的著作物)
について同一の種類の権利をもつことになるので、ディズニーの配給と対抗して、パラマウントやユニバーサルやワーナーやフォックスやソニーエンターテイメント等と組んで独自配給できちゃえる、ということになります。
他方で、ディズニーが、話の筋はほぼ同じながら、キャラクターや設定が全く違う、
「大マゼラン星雲からやってきた、自由と正義の税理士」
という映画を作ってきた場合、 これが著作権法27条との関係で、
「翻案」
に該当するか否か問題になります。
この点について裁判例では、
「これ(二次的著作物)に接する者が 既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること」
ができるか否かを中心に判断しています。
改変の程度が甚だしく、既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できない程度まで至っている場合にはもはや翻案ではなく、二次的著作物にも当たらないことになります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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