01851_弁護士の深謀遠慮を受け入れるか無視するか

弁護士の軍議(作戦協議)は、当然ながら、勝つため、あるいは勝率を上げるため、状況を改善するために、これを最優先の目的として行います。

特に、クライアントが、
「管理資源や知的資源(状況認知資源や状況評価資源)や事務資源や対処資源が不足している」
ような場合、
「すべての事実や状況や経緯をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化する」
という価値と実装の困難性を、より迅速に認識、ビビッドに理解してもらうために、クライアントが不快になるほどメタファーを用います。

この前提認知共有段階の弁護士とのコミュニケーションは、決しておもしろいものではありません。

クライアントによっては、強い不快感をもつ方も多く、弁護士とのコミュニケーションそのものを忌避する方もいます。

そもそも、弁護士はサービス業です。

クライアントが、
「不快だ、やめろ、十分だ、要らない」
と言うのであれば、クライアントの忌避を乗り越えてまで押し付けるわけにはいきません。

そこで、戦い以前の前提認知共有段階で、中断したまま、となる方もいるのが、現実です。

その間に、状況は刻一刻と変化します。

実務経験上、それは良い方向への変化ではなく悪化の一途をたどる、ということです。

これも含めて、すべては、クライアントの自業自得、因果応報、自己責任の帰結となります。

以上の話をきいて、
「不快だ、やめろ、十分だ、要らない」
という方針や前提環境や求める趣旨を180度 変える、ということもあり得るかもしれませんが、そのためには、

・過去の誤った考えや行動の特定
・過去の誤った考えや行動に及んだ原因
・過去の誤った考えや行動についての真摯な謝罪
・過去の誤った考えや行動と同様のことを二度と行わない(再発防止)誓約

等が必要になろうかと考えます。

なぜなら、前記の謝罪や誓約なしに、軍議(作戦協議)が再開されると、また、再発して、軍議が停止する危険が生じるからです。

なお、前記の謝罪や誓約があったからといって、まったくに何もなかった状況に戻るか、というわけではありません。

暫時とはいえ、喪失した時間や機会、
「敵(彼)と戦う前に、自軍(我)の欠点・脆弱性・過去の失敗をきちんと振り返って総括すること」
が遅れて、交戦に突入したことによる有害・利敵の状況変化は、回復不可能なのです。

ようするに、これらを所与として、後退した環境での目標再定義や作戦立案をしなければならない、ということなのです。

クライアントとしては不快なことではありましょうが、すべては、
「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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