賃貸借契約では、一定の期間が経過すれば、当然に、借りた物を返還しなければなりませんので、もし、借り主が、借りた物を気に入るなどして、一定の期間経過後も、同じ物を借り続けたいのであれば、再度、貸主と交渉し、新たな賃貸借契約を締結しなければなりません。
民法は、
「賃貸借の存続期間は、更新することができる(民法604条2項)」
と規定するのみで、いかに借主が同じ物を借り続けたいという希望を持っていたとしても、貸主が了解しない限り、当然には賃貸借契約が継続することはない、との立場を採用しております。
このように、民法上、借り主は、賃貸借契約を継続させるという点において、非常に弱い立場にあることは否めません。
ところが、立場の弱い借り主をそのまま放置することは社会政策上好ましくないという配慮から、不動産の借り主の立場を強化した借地借家法は、26条、28条において、建物賃貸借は更新されることを原則とし、かつ更新を拒絶するには貸主がその物を使用する必要がある場合や借り主に対し立退料を支払うという特殊事情(「正当の事由」)を必要としました。
このように、建物賃貸借契約の終了が原則として、借り主側の都合や腹積もりに委ねられることとなり、借り主の法的地位が著しく強化されるとともに、
「不動産なんて、一度貸したら、自分の所有ではなくなる」
とまで言われるようになったのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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