02049_有経営者の有事対応:混乱から抜け出すための指針

経営者が直面する有事の状況において、
「いきなり、問題が一気に押し寄せてきた」
と相談に来ることは少なくありません。

このような状況では、混乱した頭脳で思考停止に陥り、時間を無駄にしてしまうことが多いです。

特に、事業承継した社長(創業者の長男)が直面する問題は複雑で、多岐にわたります。

例えば、

・創業者の高齢による経営への悪影響
・アルバイトの大量退職
・従業員のストライキの兆し
・組合との対立
・事業承継直後の会社状況の把握不足
・受注抑制によるその場しのぎ
・親族株主からの会社清算の圧力
・業界環境の悪化と将来の不透明感

これらの問題に対して、社長は
「適当なところで会社を縮小もしくは操業停止しよう」
と考えることもあります。

しかし、ステークホルダーと
「闘わないで縮小清算」
する方法があるかどうか悩むことも多いです。

このような状況下で、経営者が混乱から抜け出すためには、まず
「環境認識ないし原理理解」
を改善する必要があります。

環境認識と原理理解の改善

1  全員の希望を叶えることは無理 

有事において「全員に全ての希望を叶える」という状況は不可能です。これは歴史的にも経験的にも証明されています。
「家族を円満に崩壊させることなく、負債を増やさず、財産を守る」
というのは妄想です。

目の前の有事を乗り越えるためには
「誰かの、一部または全部の利益」
を犠牲にする必要があります。

不平や不満をサンドバッグとして受け入れ、場合によっては反対派を粛清することも考慮しなければなりません。

2  ダメージコントロール 

有事にはダメージがつきものです。

陣羽織の汚れや刀の刃こぼれを気にしていては戦争はできません。

しかし、自分が死ぬことが確実なら戦争は辞めるべきです。

要するに、ダメージコントロールをしてジャッジすることが重要です。

制御するためには、ダメージや課題を具体的に特定し、明確にする必要があります。

「なんとなく怖い」

「なんとなくおそろしい」
という漠然とした恐怖感に基づいて行動すると、際限のない譲歩により制御不能な状態に陥ります。

3 選択肢への還元

「経営への悪影響」

「会社を縮小もしくは操業停止」
「立ちいかなくなる」
などの抽象的な表現は避けるべきです。

選択肢を豊富に持ち、それぞれの選択内容とそのプロコンを明確にすることが重要です。

選択内容やそこから見込まれる予測や帰結を抽象化せず、具体化することが必要です。

また、未経験の内容を選択肢に含める場合は、徹底的にスタディーすることが求められます。

総括

経営者が有事の状況で思考停止に陥らないためには、
「環境認識ないし原理理解」
を改善し、現実的で具体的な選択肢を見据えた判断を行うことが重要です。

全員の希望を叶えることが無理である現実を受け入れ、ダメージコントロールを適切に行い、具体的な選択肢を基に冷静なジャッジを行うことで、有事の状況を乗り越えることができます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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