02033_痴漢で逮捕された従業員を解雇できるか(教えて!鐵丸先生Vol. 45)

<事例/質問> 

従業員が、痴漢で逮捕されました。

今、勾留になっています。

弁護士がついて、お話を聞く限り、本人は無罪だ、冤罪だ、と争っているようです。

でも、ニュースで報道もされました。

当社は大変な迷惑を被っております。

すぐにでも解雇をしたいのですが、弁護士の先生は、人権派の先生で、解雇なんてとんでもない、とか言っておられます。

というより、本人は警察にいるのか拘置所にいるのか、どこにいるかもよくわかりません。

彼にどうやって伝えたら解雇は成立するでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

従業員が、痴漢で逮捕され、今、勾留になっています。

弁護士の話を聞く限り、本人は
「無罪だ、冤罪だ」
と争っているようです。

でも、ニュースで報道もされました。

当社は大変な迷惑を被っております。

すぐにでも解雇をしたいのですが、弁護士の先生は、
「人権派の先生で、解雇なんてとんでもない」
とか言っておられます。

というより、本人は警察にいるのか拘置所にいるのか、どこにいるかもよくわかりません。

彼にどうやって伝えたら解雇は成立するでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「従業員が罪を犯して逮捕されたら即解雇」
という考えの経営者も多いかもしれませんが、実際にはそれほど簡単ではありません。

罪を犯して逮捕された場合、従業員が自主的に辞めるケースが多いですが、
「犯罪は悪いが、社員としては優秀だから定年まで勤めたい」
と主張された場合、強制的に解雇するのは難しいです。

特に無罪を主張している場合は、
「無罪推定の原則」
に反することから人権上の問題となります。

ところが、逮捕された従業員が保釈されたとしても、若い女性向けの情報サイトを運営する会社でその従業員が復帰するとなると問題です。

従業員が
「無罪推定がある」
とはいえ、被疑者としての立場で勤務を続けると、顧客や社内の信頼を損なう可能性が高いからです。

また、勾留が長引き、年休を消化した後に欠勤が続く場合も、会社としての適切な対応が求められます。

多くの企業では、起訴休職制度を就業規則で定めています。

これは
「従業員が刑事事件で起訴され、拘留されている間は休職扱いにする」
というものです。

通常の休職とは異なり、起訴休職は従業員が犯罪に関与し、それが会社の信用を損なう恐れがある場合に適用されます。

例えば、痴漢の疑いがかけられた従業員が勤務を続けることで会社の信用が傷つく恐れがある場合、会社は
「病欠」
扱いではなく
「起訴休職」
として明確に対応することが重要です。

この間、従業員は労務を提供できないため、賃金は発生しません。

就業規則にこれを明記しておくことで、後々のトラブルを避けることができます。

また、
「会社に来るな」
と命じる場合、その理由を明確にしないと、
「働く意欲はあるのに会社が拒んでいる」
と解釈され、賃金支払いの問題が生じることもあります。

さらに、社員が勾留されている間に特段の対応をしない場合、民法536条2項(債務者の危険負担等)や労働基準法26条(休業手当)に基づいて賃金を巡るトラブルが発生することもあります。

懲戒解雇についても慎重な対応が求められます。

私生活上の行為であっても、会社の信用を損なう場合に限り、懲戒解雇が検討されるべきです。

特に、従業員が痴漢の事実を争っている場合、即座に懲戒解雇を行うのは行き過ぎとされるリスクがあります。

解雇無効とされる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/56914

※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、32分55秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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