競業と機密漏洩は、法的議論において異なるフェーズとして扱われるべき問題です。
たとえば、■■社が始めたビジネスが、▲▲社の競合として軌道に乗っている場合を考えてみましょう。
▲▲社としては、■■社のビジネスが機密漏洩によるものとしか思えないほど極似していると主張しても、それが必ずしも機密漏洩を伴うとは限りません。
裁判所に訴え出ても、この点を■■社側の弁護士が
「たとえ競業が行われていても、それが必ずしも機密漏洩を伴うとは限らない」
と主張することは十分に考えられます。
具体的には、
「関連会社である□□社は、■■社に対して機密を積極的に漏洩した事実はなく、単に資金やデータ、プログラムを提供しただけである」
といった主張が考えられます。
さらに、□□社が様々なクライアントと取引するのは通常の業務であり、その中で■■社も他の顧客と同様に公平に扱っているという見解です。
このような主張に対して、▲▲社側がもし機密漏洩があったと主張するなら、その証拠を具体的に示す必要があるでしょう。
こうした法的交渉や裁判では、非常識に見える主張であっても容認される場合があります。
反論が不十分であれば、逆に主張した側が無責任な攻撃を行ったと見なされる可能性もあります。
要するに、非常識ながら法的に認められる手法も存在し得るのです。
そのような手法に対するカウンターロジックを構築することは可能ですが、最終的に裁判で勝訴しない限り、▲▲社の不利な状況は解消されません。
その間、▲▲社に対して支払いが停止されたり、時間と資金面での困難に直面することがあります。
このように、法的な攻撃においては、理論や理由だけでなく、時間と資源の管理も重要な要素となります。
そしてもう1点。
▲▲社側が法律相談をした弁護士から受けた助言、
「訴訟提起は何とか可能だが、勝ち切るのは難しいと考えられる」
という点を、▲▲社としてどう評価するか、ということです。
「勝たなくてもいいし、■■社に負荷をかけて牽制すればいい」
というのであれば、副次的な効果を期待して、戦略上、その作戦に取り組む価値があると考えられます。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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