<事例/質問>
ある交渉案件について、
「当方が多少の条件面での不利を我慢しても、時間優先で早期に講和したい」
という方針のもと、弁護士をつかって、すすめてきました。
そうしたところ、相手方が折れてきました。
そこで、社内で強気にすすめることにしようかと、弁護士に相談したところ、弁護士は、何やら不満顔です。
こんなことで、足踏みしていると、不利に傾くことになりかねません。
社長は、
「そんな弁護士は変えろ」
と言い出す始末です。
何が悪かったのでしょう。
どうしたらいいでしょう。
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
交渉の方針として
「早期講和を優先する」
方向で進めてきたものの、相手方が歩み寄りの姿勢を見せたため、急遽
「強気に進めるべきか」
と社内で議論が起こったのですね。
しかし、ここで弁護士が不満顔を見せたのは、
「指示変更が曖昧なままで進めるのはリスクが高い」
と判断したためです。
弁護士にとって、交渉方針や戦略を明確に示されることは非常に重要です。
急な判断変更が発生した場合、特に
「戦局や情勢判断に基づく方針の変更」
には、クライアントからの具体的な指示が必要です。
曖昧な意向や推察の余地のある指示の下では、弁護士としては、戦略上のリスクを一方的に引き受けることが難しいためです。
もしこうした場面で足踏みしてしまうと、交渉は思わぬ方向に進んでしまいかねません。
そこでクライアントが行うべきことは、次の2つの選択肢のうちどちらを優先するかを、弁護士に文書で明確に示すことです。
1)要望を再優先し、時間がかかっても交渉条件の達成を目指す
2)時間を優先し、多少の交渉条件の妥協を許容する
もし、指示が不明確であったり、指定した期限までに指示が示されなければ、弁護士としては
「1)要望を再優先し、時間がかかっても交渉条件の達成を目指す」
従前の方針を保持せざるを得なくなります。
これは、結果としてクライアントの利益を守るための対応にもつながります。
弁護士に
「黙示の意向を察してほしい」
など、解釈に余地があるような要求をされる方も時折いらっしゃいますが、こうした曖昧な指示のもとで進めることはリスクが高く、弁護士としても責任転嫁や非難を避けるためにも、明確な方針指示をお願いしたいところです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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