消費者が気ままに商品を使ってしまった場合も、契約が成立することはなく、会社は常に代金を求めることができないことになるのかといえば、そうでもありません。
この点、消費者の中には、気に入った製品がたまたま送られてきたと思い、満足して利用する者もいるでしょうし、そこまでいかなくとも、少し怪しいけれど使ってみたらなかなか良くて買ってもいいと考える者もいることでしょう。
そこで、このような事態を想定し、民法526条2項は
「契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する」
と定めています。
ここにいう
「承諾の意思表示と認めるべき事実」
とは、消費者に
「送られてきた商品を認識しながらあえて使用した」
などを指し、要するに、
「普通、そのような事実があるのであれば、商品を購入するつもりがあったのだろう」
と考えられ、契約成立の余地があるということになります。
以上からすると、消費者は、
「勝手に送りつけられたものだから、契約が成立しているわけでもなく支払義務はないが、かといって商品を使用することもできず預かっておく」
という中途半端状態に陥ります。
そこで、特定商取引法59条は、
「14日間預かっておけばその後は処分しても大丈夫」
と、中途半端な状態に期限をもうけ、それ以降は、返品すべき義務がないのはもちろん、使おうが売ろうが自由と定め、消費者を手厚く保護しています。
すなわち、その反面、事業者としては、売買契約が締結できないどころか、商品を失うだけという事態が多く生じることが想定されるわけです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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