契約書確認や修正を依頼する際には、ビジネスの意図を明確にし、それを契約内容に正しく反映させることが重要です。
実際、漠然とした依頼をする方がいらっしゃいます。
漠然とした依頼の例
「ビジネスの概要としては、A研究所と業務提携契約を結び、基本的に、研究成果は相手方に、ビジネスはこちらが受け取る」
1 相手方から送られてきた契約書を読んで、内容を理解してほしい
2 ビジネスの概要と契約書に整合しない点があれば指摘してほしい
3 契約書に不利な条項があれば指摘してほしい
4 契約書をこちらの意図を反映した形に修正してほしい
無料相談でできることの限界
このような依頼に対しては、無料相談でできるコメントの範囲は限られています。
次のようなコメントにとどまる場合があります。
「契約書を読む限り、『ビジネスはこちらが受け取る』という形にはなっていません。
文書で煙に巻く表現が使われており、最終的に得をするのは相手方です。
このままでは、依頼者にとって不利な契約となる可能性が高いです」
このように、契約書内容が依頼者の意図と異なる場合には、全面的な見直しが必要になります。
契約書修正には、次のようなステップを踏むことが求められます。
契約書修正におけるステップ
1 現状の契約書の問題点を明確にする
依頼者が意図する
「ビジネスはこちらが受け取る」
という内容が、契約書に正しく反映されていない場合、契約内容全体の見直しが必要です。
相手方が作成した契約書は、通常、相手方に有利な条件となっています。
そのため、表現に潜む不利な点を洗い出すことが最初のステップです。
2 法務対応の予算を確認する
契約書修正には、時に
「フルリフォーム」(完全改訂)
が必要になります。
そのため、依頼者がどの程度の法務予算を確保できるか、事前に明確にしておく必要があります。
予算が決まったら、弁護士の関与範囲や優先順位を具体的に設定し、効率的な対応が可能になります。
3 修正に向けたプロセスを進める
契約書修正には、依頼者の意図を具体化する作業が必要となります。
その際、
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化」
のプロセスを活用して、契約内容を明確に調整していきます。
契約書対応をスムーズに進めるためのアドバイス
① ビジネスの意図を明確にする
依頼者が考える
「ビジネスはこちらが受け取る」
という意図を、具体的な契約条項に落とし込む必要があります。
以下のようなポイントを事前に整理しておくと、対応がスムーズに進むでしょう。
・ビジネスの権利を取得する条件とは何か?
・研究とビジネスの権利をどのように選択するか?
・契約解除や成果未達成時の対応はどうなのか?
② 法務対応の予算を事前に確認する
契約書の内容によっては、大幅な修正が必要になる場合があります。
そのため、法務予算を事前に確保しておくことが重要です。
・どの範囲まで修正するのか?
・修正の優先順位をどう設定するか?
③ 契約書リスクポイントを洗い出す
弁護士に依頼する際は、リスクを重点的に確認してもらいましょう。
たとえば注意すべきポイントとして、次のような条項が挙げられます。
・一方的に契約解除を可能にする条項が含まれていないか?
・紛争時、管轄地が相手の地域に限定されていないか?
・過剰に過酷なスケジュールや義務が課されていないか?
④ 修正の具体的な要望を提案する
弁護士に修正を依頼する際には、どの条項を追加・削除・変更したいのか、具体的な希望を明確に伝えることが重要です。
依頼者の意図が共有されていれば、修正作業もスムーズに進みます。
まとめ
契約書対応は、依頼者のビジネスの意図を
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化する」
重要なプロセスです。
相手方が作成した契約書が、依頼者にとって不利な条件を含む場合、全面的な見直しが必要になります。
そのため、依頼者自身が自分の意図や優先事項を整理した上で、弁護士や専門家と協議することが求められます。
契約書の修正は、改訂文書の整備ではなく、ビジネスの方向性を決定する重要なプロセスです。
依頼者が主体的に動き、有利な契約内容を作り上げる努力を惜しまないことが、成功への鍵となります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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