<事例/質問>
相手から内容証明が送られてきました。
「えっ、これってどういう意味?」
「無視したらダメ?」
「すぐに返信しないとまずい?」
はじめてのことなので、社内で大騒ぎとなりました。
相手方は、自分の会社よりも規模が大きく、世間的な認知度も評価も高いです。
ケンカになることは避けられません。
そこで、
「回答書をどのように送るのが正しいのか?」
を考えました。
落ち度のない対応をしたいので、 ①~⑤の選択肢を検討しています。
① 相手にまずFAXを送り、その後、正式に内容証明として送る
② 相手に直接、内容証明を送る
③ 相手に電子メールで送る
④ 相手に普通郵便で送る
⑤ それ以外の方法
どれが有効でしょうか。
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
内容証明が届いた=「戦いのゴングが鳴った」
まず、大前提として覚えておいてほしいのは、内容証明が届くということは、相手が正式に
「ケンカを売ってきた」
ということです。
「いやいや、そんな大げさな……」
と思われるかもしれませんが、実際に内容証明ということは、それなりに手間がかかる作業です。
普通の手紙やメールではなく、わざわざ内容証明という手段を使ってきたということは、
「きちんと証拠を残したい」
「言い逃れできないようにしたい」
という相手の明確な意思表示です。
つまり、これは単純意見交換ではなく、
「戦争が始まるぞ」
というサインだと考えたほうがいいのです。
「回答書」はどう送りますか?
結論として、最適な方法は次のとおりです。
「金曜日の夕方」にFAXを送る → その後、正式に内容証明を送る。
1 「まずFAX送信」の理由
FAXで先に送ることで、
「あなたの主張、確かに受け取った」
という意思を明確に示します。
内容証明は郵送のため、相手の手元に届くまで時間差が発生します。
ただし、FAXなら即時に相手に届くため、
「こちらもちゃんと対応しています」
「なめるなよ」
というメッセージを送ることができます。
また、FAXを送ることで、
「すぐに対応してきたな」
という印象を与え、こちらの姿勢をアピールすることも可能です。
2 その後、内容証明
FAXだけでは、正式な証拠にはなりません。
そこで、意思決定の内容証明郵便を送り、
「正式な回答として、これが意思表示だ」
と示すことが重要です。
これによって、相手方に対して、法的な対応を考慮した毅然とした態度を示すことになるのです。
3 「金曜日の夕方」にFAXする理由
ここで重要なポイントとなるのが、FAXを送るタイミングです。
ただ送るのではなく、
「金曜日の夕方」
に送ることが重要です。
これには、次のような効果が期待できます。
(1)相手に「モヤモヤ」を持ち越させる
金曜日の夕方にFAXをすることで、相手は
「週末を落ち着いて眠れなくなる」
可能性があります。
通常、金曜日の夕方は
「仕事を片付けて週末に備える時間帯」
です。
そこへ、いきなりFAXが届くとどうなるか?
「えっ、こんなタイミングで反撃が来た・・・」
「週末その間どう対応するか考えなきゃ・・・」
という状況になり、相手は週末の間ずっとこの問題を意識せざるを得なくなります。
このように、相手に余計なストレスを与えることができます。
4 すぐに決断しにくい状況を作る
FAXを受け取った相手方が、
「よし、すぐに戦おう!」
と思っても、すでに会社の営業時間が終わりかけている場合が多いものです。
企業によっては、意思決定者がいない、ということもあります。
すると、相手は
「すぐに対応できない」
「どうするか週末考えなければいけない」
という状況になり、こちらが心理的に優位に立つことができます。
つまり、
「相手にとって最も嫌なタイミング」
で攻めることで、戦略的に有利な立場を築くことができるのです。
まとめ:「金曜日の夕方」にFAX→その後、内容証明で攻める
内容証明が届いたら、それは戦争開始の合図です。
このシーンでは、
「どう対応するか」
が非常に重要になります。
ベストな選択肢は、
「金曜日の夕方にFAXで送る」→「その後、内容証明を送る」
という二段構えの戦略です。
これにより、
・「すぐに対応する」ことで相手にプレッシャーを与える
・「記録を残す」ことで、厳密な意思表示をする
・「週末のモヤモヤ」を相手に持ち越させ、心理的な優位に立つ
ことができます。
内容証明が届いても焦らず、冷静に、適切な方法で回答書を送りましょう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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