<事例/質問>
海外法律事務所との法務DD契約について、Engagement Letter をご確認いただきたく存じます。
日付や宛先は変更予定ですが、本文の内容はこのままで進める方向です。
問題点や修正すべき点があれば、ご指摘ください。
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
契約の穴としては、以下の2点が考えられます。
・「そちらが資料を出してこないから、やんねーよ」 というリスク
→ つまり、必要な資料の提供がスムーズにいかない場合、相手方が業務を進めず、その責任がこちらに押し付けられる可能性がある。
・「資料は揃ったけど、テーマは決まっていないから、そちらのニーズとは無関係に適当にやるよ」 というリスク
→ スコープが不明確なままだと、相手方が勝手な解釈で調査を進め、本来求めていたものとは違う成果物が出てくる可能性が高い。
この穴を防ぐためには、以下の2点を契約書に明記しておくことが重要です。
1 資料収集の責任分担(どちらが、どの範囲の資料を準備するのか)
2 スコープの明記(何を対象に、どの程度の深さで調査を行うのか)
もっとも、そもそもの話として
「こちらとして明確にイメージできていない成果物」
を求める形で契約すること自体が異常です。
これは、ICT導入に失敗する情報弱者企業 と同じ構造になっています。
たとえば、ICT導入で失敗する企業の典型例は、
「どのようなシステムが必要なのか」
を明確にせず、システム販売会社に丸投げしてしまうケースです。
「何を食べたいのか、いくらで、どこで食べたいのか」
を決められず、毎回レストランの店員に決めてもらっているような状態とも言えます。
結果として、
「お金はあるが、何がほしいかわからない」
という状態に陥り、高額なシステムを言われるがままに購入してしまいます。
これはまさに
「カモがネギと鍋と出汁をしょってやってきた」
状態。
こうなれば、食い物にされるのは時間の問題です。
法務DD契約も同じです。
契約の立て付けが曖昧なままだと、こちらの意図とは違う方向に進み、求めていたものが得られないどころか、余計なコストまで発生します。
「お金を払ったのに、よく分からない報告書を受け取った」
という最悪の事態を防ぐためにも、契約のスコープを明確にし、資料収集の責任を整理する ことが不可欠です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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