<事例/質問>
私は小さな会社を経営しており、友人でもある取引先に500万円の売掛金を請求しています。
しかし、支払期限を過ぎても入金がなく、何度か催促しましたが、
「もう少し待ってほしい」
と言われるばかりで、一向に支払われる気配がありません。
そこで、法的手段を検討しています。
知人に相談したところ、
「まずは内容証明郵便を送って請求し、それでもダメなら訴訟を考えるのが一般的」
と言われました。
ただ、相手側はすでに弁護士をつけているとの情報もあります。
こういう場合、内容証明を送っても効果があるのか、それともすぐに訴訟を起こしたほうがいいのか? どちらが最善の方法なのか迷っています。
費用もかかるため、できるだけ負担を抑えて、確実に回収する方法を知りたいです。
このような場合、どう対応すればよいのでしょうか?
<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>
法的なトラブルに直面したとき、まず考えるべきは
「示談で解決できるのか、それとも裁判を起こすべきか?」
という選択肢です。
どちらを選ぶかによって、展開は大きく変わります。
1 示談交渉は有効か?
一般的に、内容証明郵便を送付して示談交渉を試みることは、裁判の前段階として有効な手段です。
相手が弁護士をつけない状態で、直接交渉できる場合、こちらが主導権を握ることができ、スムーズに解決することもあります。
しかし、相手方がすでに弁護士をつけているのであれば、こちらが内容証明を送っても、相手の弁護士が冷静に受け止めるだけで、交渉が進まない可能性が高いでしょう。
むしろ、
「示談交渉に応じるつもりはない」
という態度を明確にされてしまうリスクもあります。
つまり、示談交渉を試みたところで、
「空振り」
に終わる公算が大きいということです。
2 訴訟提起のメリット
一方で、訴訟を起こすとなると、相手方も無視することはできません。
裁判は法的拘束力を伴うため、被告となった相手は対応せざるを得なくなります。
また、訴訟が進む中で、裁判所が和解の機会を設けることも多く、訴訟を通じて和解に持ち込むことも可能です。
特に、今回のケースでは相手方が開業している以上、今すぐに倒産する可能性は低いと考えられます。
そのため、訴訟を起こしても回収不能になるリスクは現時点ではそれほど高くないでしょう。
また、請求額についても、500万円プラス法定利率(6%)の遅延損害金を請求できます。
もし仮に12%の合意があったとしても、それを証明する証拠が見当たらないのであれば、残念でしょうが、商事法定利率の6%を適用するのが妥当です。
3 訴訟提起にかかるコストとリスク
もちろん、訴訟を起こすには、弁護士費用や裁判費用がかかります。
着手金を支払う必要があるため、その点も考慮しなければなりません。
ただし、訴訟で勝訴すれば、判決に基づいて強制執行を行うことができるため、回収の可能性は高まります。
最大のリスクは、相手方が途中で倒産してしまうことです。
現時点では開業を続けているようですが、営業力がないのに無理に開業した結果、財務状況が悪化している可能性もあります。
この点は慎重に見極める必要があります。
4 結論—内容証明で示談交渉、その後、訴訟提起
まずは内容証明での示談交渉を試み、相手が弁護士をつけていて示談交渉に応じないようであれば訴訟提起、という流れが、合理的でしょう。
裁判を起こすことで、相手にプレッシャーを与え、和解の機会を作ることも可能です。
取引先が友人ということで、遠慮があったのかもしれませんね。
しかし、売掛金が500万円になるまで放置した結果、回収するのに資源(カネ・時間)を費消することになってしまいました。
これは自招の結果です。
高い勉強代だと割り切ったほうが、決断もできるでしょう。
着手金に問題がなければ、すぐに内容証明による示談交渉、そして、訴訟を進める準備を整えます。
報酬契約と訴訟委任状を用意します。
迅速に手続きを進めていきましょう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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