02118_企業法務ケーススタディ:架電時の録音は任意?証拠価値と実務リスクを検討する

<事例/質問>

わが社では、コンプライアンス強化の課題として、法人のお客様やビジネスパートナーに確認したい事項が出てまいりました。

電話をかけて確認することにしました。

その際、念のために録音したいと考えています。

録音はトラブル時の証拠として有効だと思いますが、
「事前の同意がない録音は証拠価値が低下する」
という意見もあります。

また、こちらから電話をかける際に
「録音します」
と言うと、先方との会話がぎこちなくなり、必要な情報が得られにくくなるリスクを懸念しています。

法のリスクと実務上のメリット・デメリットのバランスについて、ぜひご意見をお聞かせください。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

1 録音の証拠価値と法的リスク

結論から言えば、相手に無断で録音を行っても、民事上の証拠としては十分に価値があります。

よほどひどいケース(例えば、プライバシーが最も高いとされるピロートークなど寝室での会話)でもない限り、民事には違法収集証拠排除法則の適用はない、と解されています。

ただし、実務的なリスクとして
「秘密録音は違法だ」
と先方からクレームを受ける可能性はゼロではありません。

2  一般的な告知のトレンドと今回のケース

近年では、
「会話品質の向上を目指して録音をさせてもらう場合があります」
という告知を行っている企業も多く見られます。

しかし、それは、顧客からの問い合わせ電話の場合であり、今回のように
「当社から確認のために顧客に架電する」
ケースでは、事前に録音を告知すると相手が警戒し、必要な情報が得られにくくなる可能性があります。

3  結論:実務上のリスクはあるが、録音自体は許容範囲

今回のケースでは、録音しないことでトラブル発生時に証拠を確保できないリスクの方が大きいと考えられます。

無断録音を行ったとしても、法的には特に問題視される可能性は低いと考えられ、許容範囲といえましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです