企業がキャンペーンや懸賞を行う場面は、広報・販促の現場で日常茶飯事となっています。
さて、
「賞金」
や
「受賞」
というフェーズでは、企業側にとって、思わぬ落とし穴があります。
たとえば、
・年齢確認の抜け落ち
・受賞者が18歳未満だった場合の対応
・賞金の送金に伴う個人情報の取扱い
など、
「見落としがちな論点」
が次々と浮かびます。
そもそも懸賞とは、企業が外部の不特定多数の
「個人」
と関係を結ぶ場です。
個人からすれば、ある日、
「当選しました」
「おめでとうございます」
と、まるでサプライズのように企業から通知が舞い込みます。
それは単なる“通知”ではありません。
その背後には、企業と個人が対話も契約もないまま、法的な関係に入ってしまうという構造があります。
このような構造があるからこそ、企業側には、応募資格の明記や、本人確認、個人情報の取扱いについて、あらかじめルールを定めておくことが求められるのです。
たとえば、あるクライアントから、次のような質問が寄せられました。
「受賞者が18歳未満だった場合、賞金はどうすべきでしょうか?」
「送金時の個人情報は、どこまで取得してよいのでしょうか?」
それに対しては、次のようにお伝えしました。
1 まず、応募時に「18歳以上であること」という資格要件を明記すること
2 さらに、受賞時には「本人確認」をお願いする旨を、注意書きにしっかり記載すること
3 そのうえで、賞金授与に際しては「確認書」にご署名いただく方式をとること
3の
「確認書」
の中で、氏名・住所・送金先を明記し、個人情報の利用目的と管理体制を説明することが大切です、と。
これは、形式だけの対策ではありません。
法的に、説明責任・取得根拠・本人同意といった三拍子がそろう、合理的な対処です。
もうひとつ、忘れてはならないのが
「柔軟性」
です。
もし、
「受賞はうれしいが、個人情報は明かしたくない」
「賞金はいらない」
という受賞者がいた場合は、
「賞金のみ辞退」
という選択肢も用意しておきましょう。
企業側は、このように、あらかじめ“逃げ道”をつくっておくことで、混乱や紛争を防ぐことができるのです。
キャンペーンは、華やかに始まります。
懸賞の場に、法は見えません。
けれども、法のリスクは必ずあります。
だからこそ、
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
この5つの視点で、事前にルールと対応方針を整えておくことが重要です。
“備えている”企業は、
「万が一」
の対策に静かに手を打っているのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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