00424_違法残業により役員個人が責任を負う場合

会社が責任を負うとしても、役員個人が賠償責任を負うなどということがあるのでしょうか。

この点について、過労死等の場合、会社が責任を負うのはともかく、役員
「個人」
が賠償の義務を負うなんて考えられないという経営者が大半であると思われます。

しかしながら、役員個人も損害賠償責任を負うとの裁判例が近年出されていますので十分な注意が必要です。

これは、
「安全配慮義務」
を会社が負う以上、取締役個人としても、かかる義務を実施可能な会社の体制を万全に構築する義務があり、それを構築していなかったということが責任の理由とされました(「大庄事件」京都地判2010<平成22>年5月25日及び大阪高判2011<平成23>年5月25日。最高裁は上告棄却、上告不受理決定 )。

取締役らが、企業経営の全般について重い善管注意義務を負っていることは皆さんご存じのとおりです。

そして、役員は善管注意義務違反によって損害賠償責任を負うことになるのですが、同判決では、労使関係が企業経営に不可欠であるため、会社の
「安全配慮義務」
を万全にするための体制構築義務も、善管注意義務の具体的な一内容であると明確に判示されたわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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