「裏技で切り抜けられる」。
そう考える経営者は少なくありません。
かし、経営危機に必要なのは
「裏技」
ではなく、条件を定め、準備し、決断を実行する力です。
これを私は経営者の法務リテラシーと呼んでいます。
やるべきことは複雑ではありません。
第一に、不正を排除すること。逆粉飾は「言わない・やらない・許さない」と社内で徹底する。
第二に、事実と数字を可視化すること。PL・BS・資金繰り・未来シナリオを揃え、現状を誤魔化さない。
第三に、いつ手続に移るか、誰にどの負担を求めるか――その条件を前もって線引きし、必ず記録に残す。
第四に、利害調整の地図を描くこと。
従業員・金融機関・取引先・株主、それぞれの負担と利益を明らかにする。
第五に、説明責任を果たす準備を整えること。数字と計画を言語化し、関係者に理解させる説明力を備える。
実例を挙げましょう。
R社は、不正を排除し、数字と計画を提示し、切替条件を社内で固め、外部専門家とも前提を揃えていました。
その結果、スポンサー候補との交渉は具体化し、再建に進むことができました。
一方、S社は
「そのうち改善する」
と先送りを重ね、不正に足を踏み入れかけた時点で弁護士に指摘されました。
右往左往の末、数字も計画も示せず、支援の機会を失いました。
結果、取引先の信頼は失われ、支援の道は閉ざされました。
要するに、差を分けたのは損益ではありません。
不正を排除し、数字を示し、条件を線引きし、関係者に説明する――この体制を途切れなく続けられるかどうかです。
経営を守るのは
「強さ」
ではなく
「手順」
です。
ごまかしや先送りではなく、条件を定め、準備し、決断を実行すること。
誤用と遅延こそが、最大の敵なのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
✓当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ:
企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所