02200_勝てる経営者は知っている!企業法務における「天の時・地の利・人の和・兵糧」4つの鉄則

勝てる経営者だけが知っている企業法務の真実

企業法務の現場は、甘くありません。

法廷での争いにしろ、社内での合意形成にしろ、契約交渉にしろ、それらはすべて
「戦い」
と言って差し支えない、濃密で過酷な局面の連続です。

「どうすれば勝てるか?」
――知る人ぞ知る戦い方、勝てる経営者は当たり前のように実践している、生々しく残酷なまでの真実をお伝えします。

フワフワした理想論や、学術的な正しさ――そんなものは戦場では一切役に立ちません。

「天の時、地の利、人の和、そして兵糧」

これは、兵法の世界で語られる常識であり、同時に、クライアントに問うべき4つの覚悟でもあります。

天の時――ハンコを押した後では、もう“負け”が始まっている

経営者のなかには、
「とりあえずハンコを押してから考える」
タイプの方がいます。

ビジネスのスピードを優先するあまり、調査(DD)を端折り、関係者や部下の報告を鵜吞みにして契約に突っ込むことを厭いません。

むしろ、
「弁護士はビジネススピードをわかっていない」
と、得意げにおっしゃる。

トラブルが起こっても、
「まだ致命的ではない」
と、悠長なことをおっしゃる。

結果、
「サインしてしまったけど、これって大丈夫ですか?」
という相談になるのです。

調査(DD)を割愛したり、
「大丈夫です!」
という根拠のない言葉を鵜吞みにしたりした時点で、負け戦は始まっているのです。

兵法の世界でいえば、その時点で、すでに
「天の時」
を逸しているのです。

要するに、(企業法務においては)後手に回っている、ということです。

もっと言えば、軽々しくハンコを押した時点で、もう遅いのです。

まずは、この現実を受け入れなければ、始まりません。

とはいえ、絶望する必要はありません。

その甘い尻を叩くのが弁護士の仕事です。

訴訟前に交渉フェーズがある、というのは事実です。

これは、
「まだ巻き返しが間に合うライン」
があるということです。

ただし、それには条件があります。

あなたが、状況を
「危機」
として認識し、
「今ならまだギリ間に合う」
という
「時間の鮮度」
を理解し、即座にシリアスな対応を取る
「覚悟」
があるか、ということです。

戦いの“構え”ともいうべきものです。

ここで“構え”を間違えると、次の一手が
「敗戦処理」
になるだけです。

地の利――契約書は“盾”になり、“穴”にもなる

多くの経営者は
「契約書にサインさえもらえれば勝ち」
あるいは
「サインしてしまったら負け」
という牧歌的な幻想を抱いています。

残念ながら、どちらも現実を知らなさすぎます。

契約書とは、たしかに戦いのための
「装備」
です。

しかし、それは
「完全な勝利の証」
でもなければ、
「取り返しのつかない失敗」
でもありません。

どこかに必ず
「穴」
があります。

完璧な契約など、この世に存在しないからです。

逆に言えば、その
「穴」
を突けば、形勢をひっくり返せる(あるいは、ひっくり返される)可能性すらあるのです。

たとえば、
・契約条項の曖昧な言い回し
・立証責任の所在
・実務運用との乖離
このような
「解釈の揺れ」
は、修羅場を潜り抜けたプロの目から見れば、すぐにわかります。

問題は、あなたがこの事実を知っているか。

そして、契約書の読み込みやリスク分析を、丸投げで済ませていないか、ということです。

戦場では、武器の使い方を知らない者から、まず死にます。

人の和――カネとリスペクトをケチれば、人は必ず裏切る

「人の和」
とは、命がけで共に戦ってくれる“戦友”が、あなたのそばにいるかどうか、です。

一人で戦える場面など、現実にはほとんどありません。

契約に
「穴」
があっても、それを突くには技術とタイミング、そして
「人」
が必要です。

社内のキーマン、調査(DD)に長けたプロフェッショナル、そして攻撃(あるいは防御)に強い弁護士等、
「関係者の協力」
なくしては、戦えません。

ところが、残念ながら、法務の戦いにおいて、
「人の和」
は、最も過小評価されている要素です。

さて、ここからが
「カネと覚悟」
の話です。

現場がバラバラ、決裁者が動かない状況では、プロがどんな戦術を考えても、机上の空論で終わります。

そして、最も重要なこと。

あなたには、彼らを動かす
「リスペクト」

「感謝力」
がありますか?

要するに、その協力者への
「対価とリスペクト」
を惜しまない、人間的な
「感謝力」
が、あなたにあるか、ということです。

口では
「頼りにしてます」
と言いながら、金は出さない、報酬はケチる、感謝の言葉もない――そういう経営者は、例外なく人が離れます。

「人の和」
が崩れると、戦いは崩壊します。

あなたが本当に勝ちたいのなら、
「人の和」
を、戦略資源として扱う覚悟が必要です。

兵糧――「金をケチる者」が戦場で死ぬ理由

「兵糧」
この言葉が刺さらないなら、あなたは戦うべきではありません。

「シリアスな状況」
は、
「シリアスな予算」
と同義です。

「金をケチる者は、必ず負ける」
これは真理です。

法務の現場で勝ち筋をつくるには、
・弁護士の投入
・外部調査会社の活用
・財務・会計・業界の専門家との連携
など、さまざまな兵站(ロジスティクス)が必要です。

兵站(ロジスティクス)なくして戦争はできません。

それを
「費用が高いから」
と渋れば、どうなるか?

その瞬間、戦力は半減し、勝てるはずの戦をも自滅に導きます。

しかも、金をケチる人に限って、
「成果を出せ」
と言う。

「金は出せないけど、勝ってください」
と(言葉はとても丁寧です)。

それは、
「無料で命を懸けろ」
と言っているようなもので、品性の欠片もない、下品な要求です。

最大の敗因は、「人の和」と「兵糧」が一緒に崩れるとき

戦いに敗れるクライアントの共通点は、2つです。
・「カネをケチる」こと
・専門家に対する「リスペクトが著しく欠如している」こと

繰り返しますが、弁護士や専門家は、カネとリスペクトで動きます。

この2つが欠けた瞬間、専門家のモチベーションは落ち、情報共有は鈍り、現場は混乱します。

「費用は抑えたいが、世界一の成果を出せ」?
「協力者は欲しいが、報酬は出せない」?

これらの言葉は、
「人の和の崩壊」
を意味します。

勝てる戦も、なすすべなく負ける。

敗戦企業の典型パターンです。

あなたは、勝てる経営者になる覚悟が、本当にあるのか。

その分水嶺は、
「どこに金を出すか」
「誰に頭を下げるか」
に如実に表れます。

正論より、構え――あなたはもう“戦地”にいる

「これは簡単に解決できる」
と思っている時点で、アウトです。

現実には、和解、交渉、訴訟、撤退――あらゆる選択肢について、
「金はいくらかかるか」
「誰が動くのか」
「時間はどれだけあるか」
と、現実的なアクションプランに落とし込まなければ、絵に描いた餅になります。

それは、ただ契約書を読むだけの人間には、できません。

緻密なロジックだけでなく、汚い現実と人間の欲望を知ってこそ、法務での戦いは機能します。

それには、泥をかぶり、修羅場をくぐったプロフェッショナルの目と手が必要です。

しかし、そのプロたちも、あなたの“構え”がブレていれば力を発揮できない、ということなのです。

戦う前に、あなたの“構え”は、できていますか?

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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