「映画が公開されて、DVD化されたら、もう皆が内容を知っているわけだから、DVDを借りたり、買ってきて、これを飲食店とかで客の前で上映しても、大した問題にはならないんじゃいないの?」
こんな素人考えが浮上してきそうですが、これは著作権法上、どう取り扱われるのでしょうか。
映画の著作物に特に認められている権利が
「頒布権」
です。
これは、映画の製作者や制作会社が映画のフィルムをコピーすることや、コピーしたフィルムを独占的に譲渡・貸与できる権利です。
他の著作物とは異なり、市場にどの程度流通させるべきかという部分までコントロール可能な点が、映画の著作物の大きな特徴です。
すなわち、多額の費用が必要な映画製作においては、投下資金の回収の機会を保護する必要性が高く、実体としても、映画フィルムを映画館に貸与することでフィルムの流通をコントロールしていることが、映画にのみ頒布権が認められている根拠となっています。
流通をコントロールするためには、映画館での視聴、レンタルビデオ屋でDVDを貸す、最終的に、市場でDVDを売るといったステップを踏むことで、その都度資本回収を最大化できる組み合わせを探ることが重要です。
映画会社は、投下資金の回収政策を慎重に策定し慎重に頒布を行うため、その資金回収計画を乱すことは許されません。
映画会社は、このような強力な
「頒布権」
を用いることで、
「誰にどのような期間・方法で見せることを許諾するか」
をコントロールし、レンタルビデオ屋で一般に借りることができるのは、
「家庭で家族や友だちと少人数で一定期間だけの鑑賞が許されているDVD」
に過ぎません。
したがって、このDVDを使って、公に上映するとか、さらに誰かに貸与するとかいったことは上映権ないし頒布権を侵害することになるのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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