訴訟事件において、裁判所が最大のジョーカーになります。
世間一般のイメージと実体が異なるってのは、世の中においてよくみられる現象ですが、裁判所もその1つです。
裁判所というのは、常に真実を発見できるオールマイティな権力をもった神様ではなく、他の一般のお役所同様、機能的限界が内在する機関です。
当然ながら、お役所ですから、役所内部のルールに沿って言い分を申し述べないとまったく動いてくれませんし(このような特殊なルールないし体系を要件事実論なんて呼んだりします)、お役所が動きやすい環境を作るのは、お役所から何らかのアクションをもらう側としては当然の義務です。
役所に出向いて、プラカードやメガフォンをもってワーワー叫んでも役所は何にも協力してくれませんが、一定の方式に則って完全な文書を準備して提出し、役所が好むロジックを使って説得すると、お役所は様々な便宜を図ってくれます。
我々弁護士の活動というのは、片手に依頼者というお客、もう片手に裁判所というお客(「判決」という我々のもっとも欲するものを出してくれるという点で、依頼者より大事な「お客さん」といえます)を抱え、その両者の認識を整合させるようにすることにあります。
バカもハサミも役人も使いようです。
このような機能的限界を十分踏まえた上で活用しなければなりませんし、逆にこういうことを踏まえず
「機能的限界のない常にかつ当然に真実が発見できる完全無欠の神様」
と考えるとたいてい訴訟運営に失敗します。
神でもなく、全能でもない、裁判所に依存したり甘えたりせず、
「機能的限界がある、気の利かない、使い勝手の悪い、何を考え、何を言い出すかわからない、世情に疎いが、ただ、独裁的権力を振り回すだけの、不気味な公務員」
と考え、うまく使いながら、
「敵」
ではなく、こちらの味方になってもらい、ハサミのように使うべきです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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